その習慣、本当に合ってる?
実質賃金、
2026年は〇〇だった!?
物の値段の上がり分を引いた本当の給料は、4年続けて減っていた。でも今年に入ってからは、毎月増えている。たとえば、お小遣いが上がっても、お菓子の値段がもっと上がれば買える数は減る。その買える数が、今年は増え始めた、というようなもの。
専門的に言うと(原典どおりの記録)
実質賃金が4年続けてマイナスだったのは事実。ただし2026年1月から7か月続けてプラスに転じており、「下がり続けている」はもう最新の記録と合っていない
- 対象
- 事業所規模5人以上。6月分確報は調査対象33,058事業所・回答24,895事業所・回収率75.3%。7月分速報は調査対象33,049事業所・回答22,666事業所・回収率68.6%。指数は2020年平均=100
- 効果
- 実質賃金(現金給与総額・調査産業計・規模5人以上・就業形態計)の前年比は、2022年 −1.0%/2023年 −2.5%/2024年 −0.3%/2025年 −1.3% と年平均が4年続けてマイナス。一方 2026年は 1月 +0.7%/2月 +2.0%/3月 +1.4%/4月 +2.0%/5月 +1.6%/6月 +2.2%/7月 +2.4%(速報)と、7か月続けてプラス。2通りの実質化(持家の帰属家賃を除く総合/総合)のどちらで見てもプラスで、同一回次にマイナスを示す系統は無い
- 限界
- 7月分は速報で、確報(例年おおむね翌々月)で改訂されうる。8月分以降は未公表で、この先も続くかは分からない。プラスへ転じた理由が名目の伸びなのか物価の伸びの鈍化なのかの分解は、本話では行っていない(同じ回次に要因分解の参考資料があるが取得していない)。共通事業所ベースには実質の系列が公表されておらず、サンプル入替えの影響を除いた実質は確認できない。すべて平均の値であり、一人ひとりの家計の値ではない
- 見立
- 命題の土台である『2022年から2025年まで4年連続マイナス』は公表値のとおりで、そこは否定しない。合っていないのは『下がり続けている』という現在形のほうで、同じ統計の直近7か月はすべてプラスだった。これは『言われていることが嘘だった』回ではなく『言われていることが古くなった』回である。7か月続いたことは、8か月目を保証しない
図で読む
動画で使った図解を、アサイとミチの会話つきで。1枚ずつ読めば、要点が順に分かります。
ポイント①
「実質賃金」は、何を・どうやって調べた数字?

ミチ: アサイさん、「実質賃金」ってそもそも何のことですか?
アサイ: お給料そのものじゃなくて、そこから物価が上がった分を引いた数字です。厚生労働省が毎月、会社に直接聞いて調べています。
ミチ: すみません、まだ分かりません。物価を引くって、どういうことですか?
アサイ: もっと分かりやすく言うと、お給料が4.0%増えても、物の値段が1.9%上がっていたら、残る増え分はその差し引きだけ、ということです。
ミチ: あ、そういうこと。今回はどれくらいの会社に聞いたんですか?
厚生労働省が毎月、33,058の会社に聞いて調べた記録(答えたのは24,895社)。
ポイント②
4年連続マイナスから、今はどうなった?

アサイ: 2022年から2025年まで、実質賃金は毎年、前の年と比べてマイナスでした。下がり方がいちばん小さかった年でマイナス0.3%、いちばん大きかった年でマイナス2.5%でした。
ミチ: えっ、4年間ずっと下がってたんですか?
アサイ: そうです。ただ、2026年に入ってからは違います。1月から7月まで、7か月続けてプラスになっています。
ミチ: あ、そういうこと。じゃあ、もう下がってないんですね。
アサイ: そこまでは言いません。プラスに変わったのは、まだ7か月ぶんです。
2022〜2025年は毎年マイナス、2026年は7か月連続でプラスに変わった。
他の国と比べると、日本の実質賃金は?

ミチ: 日本だけ特別に増えてるんですか?他の国はどうですか?
アサイ: 2026年6月で比べると、日本は2.3%の伸びでした。ドイツは1.5%、アメリカはほぼ0%です。
ミチ: 日本のほうが増えてるんですね。でも、どこの国も同じやり方で計算してるんですか?
アサイ: いいえ、違います。日本は給料の数字を物価の数字で割って自分で計算していますが、アメリカやドイツは、それぞれの国が発表した数字をそのまま使っています。
ミチ: 作り方が国によって違うなら、順位だけでは安心できませんね。
同じ月で比べると、日本の伸び(2.3%)がいちばん大きい。国ごとに測り方が違う点には注意。
ポイント③
この調べで、まだ言えないことは?

ミチ: もう安心していいってことですか?
アサイ: そこは言えません。理由が4つあります。
ミチ: 4つも?全部教えてください。
アサイ: たとえば、6月がボーナスの月で数字が大きく見えること。もう一つは、答えた会社が全体の75.3%だけで、残りの給料は入っていないことです。あと2つは、賃金の測り方が2つあることと、平均で一人ひとりの話じゃないことです。
ミチ: あ、そういうこと。4つとも、数字の見方や測り方のクセなんですね。
7月分はまだ速報。8月分より先はまだ分かっていない。
結局、どういうことなの?

ミチ: じゃあ、これは「嘘」だったってことですか?
アサイ: 嘘ではありません。4年間マイナスだったのは本当です。変わったのは、そのあとの話です。
ミチ: つまり、情報が古くなっていたということですね。
アサイ: そういうことです。7か月続けてプラスでも、8か月目がどうなるかは分かりません。
ミチ: まだ安心はできないんですね……
「嘘だった」回ではなく古くなった回。8か月目がどうなるかは分からない。
まとめ(つまり、どう考える?)
「実質賃金は下がり続けている」という話は、4年前までの記録が古くなったまま。今の記録では、もう7か月続けてプラスに変わっている。
記事の全文を読む
「実質賃金は下がり続けている」を測ったら、2026年に入って7か月連続でプラスになっていた
今回の命題は 「日本の実質賃金は、名目賃金が上がっている局面でも下がり続けている」 です。厚生労働省の毎月勤労統計調査から Excel を直接落として開きました。
まず、命題の土台から。実質賃金の前年比は、2022年がマイナス1.0%、2023年がマイナス2.5%、2024年がマイナス0.3%、2025年がマイナス1.3%。年平均で4年続けてマイナスです。ここは事実で、否定しません。
問題はその次です。2026年1月がプラス0.7%、2月がプラス2.0%、3月がプラス1.4%、4月がプラス2.0%、5月がプラス1.6%、6月がプラス2.2%、7月がプラス2.4%。7か月連続でプラスになっています(7月分は9/8公表の速報値)。同じ統計の、同じ指標です。
最新の回次は2026年6月分の結果確報、公表は2026年8月24日です。現金給与総額は534,823円で前年同月比4.0%増、実質賃金指数は145.0で2.2%増。実質化に使った消費者物価指数の前年同月比が1.9%上昇なので、差し引きでプラスになります。
ただし、そのまま安心してよい数字ではありません。限界を4つ出します。
1つ目。実質賃金は1つではありません。 同じ月の同じ賃金を、持家の帰属家賃を除く消費者物価指数で割ると2.2%増、総合の消費者物価指数で割ると2.3%増になります。概況は前者を購買力を見るため、後者を国際比較のためと説明しています。符号はどちらもプラスですが、命題はどちらを指すのか決めていません。
2つ目。これは労働者一人あたりの平均で、同じ人の給料の推移ではありません。 一般労働者は4.2%増、パートタイム労働者は3.3%増と伸びが違い、構成比が動けば、一人ひとりの賃金が変わらなくても平均は動きます。
3つ目。6月は賞与の月です。 特別に支払われた給与が4.7%増で全体を押し上げています。きまって支給する給与だけなら3.4%増で、総額の4.0%増より低い。
4つ目。回収率は75.3%です。 対象33,058事業所に対し回答24,895事業所。答えなかったおよそ4分の1の賃金は、この数字に入っていません。
この統計は訂正も出しています。2024年4月2日の告知では、東京都で調査票データ1件の処理誤りが見つかり、令和5年12月分と令和5年平均を再集計しました。訂正額は現金給与総額でその月が19円、年平均が1円のマイナス、名目・実質の賃金指数と前年同期比はいずれも訂正なしと明記されています。毎年1月に調査対象事業所の一部を入れ替えていることも、母集団労働者数のベンチマーク更新を行ったことも、告知として公開されています。作りかたを公開している統計です。
判定は不支持です。ただし「言われていることが嘘だった」のではなく、「言われていることが古くなった」回です。4年連続マイナスは事実で、その間に給料の実感が上がらなかったことも、この統計と矛盾しません。変わったのは2026年からで、まだ7か月ぶんです。
8月分はまだ公表されていません。7か月続いたことは、8か月目を保証しません。 測ったのは公表値の符号だけです。給料が上がった実感がない人が間違っている、とも言いません。平均の話と、一人ひとりの話は別です。
出典・研究の限界・ライセンス表示
この回の一次データは公的統計です。学術論文の論文カードはありません。
出典表示(ライセンス表示義務)
この回が使った一次情報の利用条件が求める4項目を、出典ごとに全件出しています(1件)。
データカード: 1-2. データカード(一次情報・主たる評価対象)
- 著者
- 厚生労働省 政策統括官付参事官付雇用・賃金福祉統計室
- 出典
- 毎月勤労統計調査(全国調査)/2026(令和8)年6月分 結果確報/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606r/2606r.html
- ライセンス
- 厚生労働省ホームページ利用規約(政府標準利用規約に準拠。出典明示のうえ複製・公衆送信・翻案が可能。加工した場合はその旨の明記が必要)
- 改変の有無
- この回の図解は、原典の図の複製ではなく、原典の表から転記した数値をもとに当方が作図した(転記元: 「毎月勤労統計調査 2026年(令和8年)7月分結果速報」時系列第1表(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2607p/xls/2607t01p.xlsx ・2026-09-09 に利用)を加工して ReeX Japan が作成)。原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。
原本の出典表記(読み上げ・画面表示用の文言)
- 出典:「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年6月分結果確報」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606r/2606r.html (2026年9月7日に利用)を加工してReeX Japanが作成
- 出典:「毎月勤労統計調査の公表結果の訂正について(令和6年4月2日)」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/maikin-teisei-20240402.pdf (2026年9月7日に利用)を加工してReeX Japanが作成
- 出典:「毎月勤労統計調査(全国調査)の令和6年1月分調査結果の公表(ベンチマーク更新等)について」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/maikin-announcement-20240315.pdf (2026年9月7日に利用)を加工してReeX Japanが作成
検証の記録(常識検証プロトコル v1.0)
命題化テスト(T1〜T5)
命題を選ぶ前に、次の5項目を通した。T4 の自己申告は、最新月の数値を見る前に書いた。
| # | テスト | 本話での判定 |
|---|---|---|
| T1 | 「Xすると Y になる」に書き直せるか | 合格。 「名目賃金が上がっている局面でも(X)、物価の影響を除いた実質賃金は前年より下がる(Y)」に書き直せる |
| T2 | Y が観測できる形になっているか | 合格。 Y=毎月勤労統計調査が毎月公表する「実質賃金指数(現金給与総額)の前年同月比」。符号がプラスかマイナスかで機械的に判定できる |
| T3 | 一次データ源が存在しそうか(あたり2本以上) | 合格。 ①厚生労働省「毎月勤労統計調査」の時系列第1表(賃金指数) ②同 時系列第6表(各国公表による主要国の実質賃金)。いずれも Excel で直接配布されている |
| T4 | どちらに転んでも番組になるか(自己申告を先に書く) | 「支持なら、給料が上がった実感がないのは気のせいではない、上がっているのは名目のほうだけだ、という回になる。不支持なら、実質賃金はすでにプラスに転じており、『実質賃金は下がり続けている』という言い方のほうが古くなっている、という回になる。どちらでも番組は成立する。」(数値の確認はこの後に行った) |
| T5 | YMYL 該当か(健康・医療・金銭・法律) | 該当(金銭)。 §8 の追加規律を適用する。個別の投資助言をしない。先行きを予測しない。政策の是非も、賃上げが十分かどうかも論じない。測るのは公表値の符号だけと台本内で明示する |
証拠台帳
```
検証回ID: M10-20260915-08
命題: 「日本の実質賃金は、名目賃金が上がっている局面でも下がり続けている」
命題の出所: 厚生労働省「毎月勤労統計調査」時系列第1表(賃金指数)の年平均・実質前年比が2022年から2025年まで4年連続マイナス(-1.0/-2.5/-0.3/-1.3)であること
判定: 不支持
判定日: 2026-09-07
```
| # | 階層 | 種別 | 出典名 | URL | 実測日時(JST) | HTTP | 取得方法 | 再利用条件 | 採否 | 採否の理由 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | L1 | 政府の基幹統計・一覧ページ | 厚生労働省「毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)」 | https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html | 2026-09-07 16:33:31 | 200 | curl で直接取得(21,963バイト) | 厚生労働省ホームページ利用規約(政府標準利用規約準拠) | 採用 | 調査の入口。訂正の告知が複数並んでいることをここで確認した(R3) |
| 2 | L1 | 同上・回次ページ | 毎月勤労統計調査 2026(令和8)年6月分 結果確報 | https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606r/2606r.html | 2026-09-07 16:33:32 | 200 | curl で直接取得(11,962バイト) | 同上 | 採用 | 最新回次であることの確認と、統計表の所在の特定 |
| 3 | L1 | 政府統計・生データ(Excel) | 同 時系列第1表 賃金指数 | https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606r/xls/2606t01r.xlsx | 2026-09-07 16:33:33 | 200 | curl でダウンロード(18,607バイト)、openpyxl で読み取り | 同上 | 採用(主データ) | 命題のYそのもの。2022〜2025年の年平均と2026年1〜6月の月次を、名目・実質の両方で転記した |
| 4 | L1 | 政府統計・生データ(Excel) | 同 時系列第6表 各国公表による主要国の実質賃金 | https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606r/xls/2606t06r.xlsx | 2026-09-07 16:33:35 | 200 | curl でダウンロード(14,768バイト)、openpyxl で読み取り | 同上 | 採用(補強) | 日本の実質賃金の符号が、他国と比べてどの位置にあるかの確認。日本の値だけ実質化の物価指数が違うことも同表の注記から確認した(R4) |
| 5 | L1 | 政府統計・概況(PDF) | 同 結果確報 概況 | https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606r/dl/pdf2606r.pdf | 2026-09-07 16:33:36 | 200 | curl でダウンロード(910,587バイト)、pdftotext で本文抽出 | 同上 | 採用 | 実額(534,823円等)、実質賃金の2通りの作り方の理由、回収率75.3%、公表日(2026年8月24日)をここから転記した |
| 6 | L1 | 政府統計・参考資料(Excel) | 同【参考資料】共通事業所による前年同月比 | https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606r/xls/kyo2606r.xlsx | 2026-09-07 16:33:38 | 200 | curl でダウンロード(25,403バイト)、openpyxl で読み取り | 同上 | 採用(R1に使用) | サンプル入替えの影響を除いた参考系列。名目のみで実質の系列が無いことを確認した |
| 7 | — | 存在確認(当時は該当なし・2026-09-08時点では超過) | 毎月勤労統計調査 2026(令和8)年7月分 速報 | https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2607p/2607p.html | 2026-09-07 16:33:39 | 404(2026-09-07時点) | curl で直接取得 | — | 当時は該当なし(R2の記録) | 2026-09-07時点では6月分確報が最新で、7月分は未公表だった。2026-09-08 16:18 JST の再実測ではHTTP 200に変化しており、同日公表されたことを確認した(→台帳#7-2) |
| 7-2 | L1 | 政府統計・回次ページ(v1.2追記) | 毎月勤労統計調査 2026(令和8)年7月分 結果速報 | https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2607p/2607p.html | 2026-09-08 16:18 | 200 | curl で直接取得 | 厚生労働省ホームページ利用規約 | 採用(追加データ) | §1-2「【2026-09-08追記】」の一次情報。同ページの時系列第1表Excel・概況PDFも同日同HTTPコードで取得した |
| 8 | L1 | 政府統計・訂正告知(PDF) | 毎月勤労統計調査の公表結果の訂正について(令和6年4月2日) | https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/maikin-teisei-20240402.pdf | 2026-09-07 16:34:08 | 200 | curl でダウンロード(363,668バイト)、pdftotext で本文抽出 | 同上 | 採用(R3の中心) | 訂正の実例。令和5年12月分・令和5年平均。東京都で調査票データ1件の処理誤りが発覚し再集計。現金給与総額は令和5年12月分が19円のマイナス訂正、令和5年平均が1円のマイナス訂正。名目・実質の賃金指数と前年同期比は訂正なし。 訂正は e-Stat 掲載の実数原表を更新する方法で行い、ホームページの概況は訂正していないと明記 |
| 9 | L1 | 政府統計・変更告知(PDF) | 毎月勤労統計調査(全国調査)の令和6年1月分調査結果の公表(ベンチマーク更新等)について(令和6年3月15日) | https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/maikin-announcement-20240315.pdf | 2026-09-07 16:34:10 | 200 | curl でダウンロード(153,492バイト)、pdftotext で本文抽出 | 同上 | 採用(R7の中心) | 毎年1月に規模30人以上の調査対象事業所の一部を入れ替えていること、およびベンチマーク更新(母集団労働者数を経済センサス等の全数調査の結果に合わせて更新する作業)を令和6年1月分で実施したこと。従来はベンチマーク更新年の前年比に複数年ぶんの乖離の影響が含まれていたため、令和5年の指数についてベンチマーク更新後の参考値を作成して比較する取扱いに変え、これを統計委員会(第203回・令和6年3月11日)に報告したと記載 |
| 10 | L1 | 政府統計・訂正告知(PDF) | 毎月勤労統計調査地方調査令和6年11月結果の一部訂正について(令和7年9月30日) | https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/maikin-teisei-20250930.pdf | 2026-09-07 16:34:06 | 200 | curl でダウンロード(58,694バイト) | 同上 | 採用(R3の補強・件数の確認のみ) | 訂正が1回きりではなく繰り返し出ていることの確認。中身の詳細は本話では扱わない(地方調査であり、本話が使う全国調査の系列とは別) |
| 11 | 該当なし(探索の記録) | 学術・政策機関のページ | 労働政策研究・研修機構 トップページ | https://www.jil.go.jp/ | 2026-09-07 16:33:42 | 200 | curl で取得(97,268バイト)、タグ除去後に文字列「実質賃金」を機械カウント | — | 不採用(0件) | 命題が言説として流通していることの確認に使おうとしたが、当該ページに「実質賃金」の語は0回。「流通していない」という意味ではなく、当方が確認できなかったという意味で記録する |
| 12 | 該当なし(探索の記録) | 政府の白書ページ | 内閣府 経済財政白書 | https://www5.cao.go.jp/keizai3/whitepaper.html | 2026-09-07 16:33:44 | 200 | 同上(15,133バイト) | — | 不採用(0件) | 同上 |
| 13 | 該当なし(探索の記録) | 労働団体のページ | 日本労働組合総連合会 トップページ | https://www.jtuc-rengo.or.jp/ | 2026-09-07 16:33:45 | 200 | 同上(31,381バイト) | — | 不採用(0件) | 同上 |
反証チェック(R1〜R7)
| R# | 探した対象 | 探した範囲(検索式・DB名・年範囲) | 結果 |
|---|---|---|---|
| R1 | 反対の結論の一次データ(同じ指標で逆の符号を示すもの) | 同一回次の中で、①2通りの実質化(帰属家賃を除く総合/総合)②共通事業所ベースの参考資料 ③時系列第6表(国際比較)の3系統をすべて確認 | 該当なし。①2通りの実質化はどちらも2026年6月がプラス(2.2%増・2.3%増)で符号が一致する。②共通事業所ベースは名目のみの公表で、名目は4.8%増と本系列(4.0%増)より高い。実質の共通事業所系列は無いため、ここから反証は立てられない(→未確認)。③国際比較表の日本の値も2026年6月が+2.3%。符号がマイナスに出ている系統は、同一回次の中に1つも見つからなかった |
| R2 | より新しい/より大きいデータ(命題の元になった数字を上書きするもの) | 厚生労働省の回次一覧(30-1a.html)を確認し、2026年7月分速報のURLに直接アクセス。v1.2で2026-09-08に再実測 | 該当あり(→台帳#3・#7・#7-2)。より新しいのは命題の側ではなく判定の側である。命題の土台(2022〜2025年の4年連続マイナス)は、2026年1〜7月の7か月連続プラスによって上書きされている。2026年7月分速報は2026-09-08公表・実質+2.4%/+2.6%で、こちらが現時点で最新である。8月分は本追記の時点でまだ公表されていない |
| R3 | 撤回・取消・行政処分 | 厚生労働省の毎月勤労統計調査 一覧ページに掲示されている訂正告知を全件確認し、うち2件のPDFを取得して本文を読んだ | 該当あり(→台帳#8・#10)。この統計は訂正が出る統計である。 令和6年4月2日の告知では、東京都で調査票データ1件の処理誤りが発覚し、令和5年12月分と令和5年平均を再集計している。ただし訂正額は現金給与総額で令和5年12月分が19円のマイナス、令和5年平均が1円のマイナスであり、名目・実質の賃金指数と前年同期比はいずれも訂正なしと明記されている。つまり本話が使う指標には影響していない。訂正の方法は e-Stat 掲載の実数原表を更新するもので、ホームページに載っている概況は訂正していないとも書かれている。一覧には令和4年から令和7年9月までの訂正告知が複数並んでおり、訂正は1回きりではない |
| R4 | 測っていた指標のすり替え(命題のYと統計が測ったYが同じか) | 概況の注1、時系列第6表の注記、時系列第1表の列構成を照合 | 該当あり。①「実質賃金」は1つではない。 同じ月の同じ賃金に対して、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で割ると 2.2%増、消費者物価指数(総合)で割ると 2.3%増になる。概況は前者を「賃金の購買力を示すため」、後者を「国際比較のため」と使い分けている。命題は、どちらの実質賃金を指しているのかを特定していない。 ②本統計が測るのは労働者一人あたりの平均であり、同じ人の給料が上がったかどうかではない。パートタイム労働者の比率が動けば、一人ひとりの賃金が変わらなくても平均は動く。③時系列第6表の日本の値は消費者物価指数(総合)で実質化されており、概況の見出し数値(帰属家賃を除く総合)とは作り方が違う |
| R5 | 資金源(統計の作成者が結論の利害関係者か) | 統計の作成主体と、外部資金の有無を確認 | 該当あり(構造としての記載)。本統計は政府の基幹統計であり、特定の民間からの資金提供は確認されなかった。ただし作成主体である厚生労働省は、賃上げを政策目標として掲げる政府の一部でもある。結果を歪めた証拠は当方が見た範囲では見当たらないが、作成者と評価される側が同じ側にいるという構造は記録に残す。この構造を補うために、統計委員会(総務省)による外部の検証の仕組みが置かれている(→台帳#9) |
| R6 | 母集団のズレ(対象が視聴者と違わないか) | 概況の調査対象と、指数の構成を確認 | 該当あり。①調査対象は事業所規模5人以上の事業所に雇われている常用労働者である。自営業者・フリーランス・会社役員・規模4人以下の事業所は入っていない。 ②一般労働者(現金給与総額 719,523円・4.2%増)とパートタイム労働者(128,891円・3.3%増)では金額も伸びも違う。全体の平均は、この2つの構成比によって動く。③2026年6月は賞与の月であり、特別に支払われた給与が 235,152円(4.7%増)と全体を押し上げている。きまって支給する給与だけを見ると 3.4%増で、現金給与総額の 4.0%増より低い |
| R7 | 生存者バイアス/出版バイアス(失敗例や欠測が記録されない構造) | 概況の回収率と、ベンチマーク更新・サンプル入替えの告知を確認 | 該当あり(→台帳#9)。①回収率は 75.3%(対象33,058事業所に対し回答24,895事業所)。回答しなかった約4分の1の事業所の賃金は、この数字に入っていない。②毎年1月に規模30人以上の調査対象事業所の一部が入れ替わる。 入れ替えの前後で数字に段差が生じうる。③令和6年1月分ではベンチマーク更新(母集団労働者数を経済センサス等の全数調査に合わせて直す作業)が行われた。厚生労働省自身が、従来のやり方では「複数年をかけて生じたベンチマークとの乖離の影響」が前年比に含まれていたと書いており、令和5年の指数についてベンチマーク更新後の参考値を作って比較する取扱いに変えている。 ④共通事業所ベースの参考資料は、まさにこの入替えの影響を除くために置かれているが、実質の系列は公表されていない |
判定理由
判定: 不支持
命題「日本の実質賃金は、名目賃金が上がっている局面でも下がり続けている」について。
- 命題の土台である「2022年から2025年まで4年連続で年平均がマイナス」は、公表値のとおりで事実である(-1.0%/-2.5%/-0.3%/-1.3%)。この部分を否定しない。
- しかし同じ統計の2026年1月から7月までの7か月は、すべてプラスである(+0.7%/+2.0%/+1.4%/+2.0%/+1.6%/+2.2%/+2.4%〔7月は速報〕)。「下がり続けている」という現在形は、最新の7か月と符号が合っていない。(v1.2で6月確報の6か月から7月速報を追加)
- 2通りの実質化のどちらで見てもプラスであり(6月分2.2%増・2.3%増、7月分2.4%増・2.6%増)、国際比較表の日本の値もプラスである(6月分+2.3%)。同一回次の中に、マイナスを示す系統は1つも見つからなかった(R1)。
- L1 の政府統計に反証があり、支持側は「4年前から2025年までの形をそのまま延長した見方」に留まる。プロトコル §4-3 の不支持に当たる。
ただし、この回は「言われていることが嘘だった」回ではない。「言われていることが古くなった」回である。
- 4年連続マイナスは事実で、その期間に給料の実感が上がらなかったことも、この統計と矛盾しない。
- 変わったのは2026年に入ってからで、その変化は2026-09-08時点で7か月ぶんである。
- 7月分は速報段階であり確報で改訂されうる(R2)。8月分以降は本追記の時点でまだ公表されておらず、この先も続くかどうかは分からない。「実質賃金がプラスに定着した」とは書かない。
この回で言わないこと(YMYL・§8)
- 先行きを予測しない。7か月続いたことは、8か月目を保証しない。
- 賃上げが十分か不十分かを評価しない。政策の是非を論じない。
- 個別の投資助言・家計の助言をしない。測ったのは公表値の符号だけである。
- 「給料が上がった実感がないのは間違いだ」とは言わない。平均の話と、一人ひとりの話は別である(R6)。
