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シューカンアカデミア
学び10/6(火) ・ ノミヤ公開中

その習慣、本当に合ってる?

机のスマホで頭が鈍る、
やり直すと〇〇!?

スマホを机に置いておくだけで勉強中の頭の働きが下がるかは、まだはっきりしない。下がったのは覚える課題だけで、同じ実験をやり直すと差は出なかった。たとえば、一度だけ「ゲームの音がすると集中できない」となっても、もう一度試したら平気だった、というようなもの。

だれ・何を調べた?スマホがあるときと無いときで、覚える力や注意の成績を比べた22本の研究をまとめた。元の実験をそっくりやり直した研究と、42人・144人の新しい実験も見た。
何がわかった?22本・43の結果をまとめると、スマホがあるほうが成績はわずかに下がった。はっきり下がったのは記憶の課題だけで、注意の成績では差ははっきりしなかった。たとえば、スマホが机にあると、覚える問題の点が少しだけ下がったけれど、集中する問題では差がはっきりしなかった、という感じです。
まだわからないこと元の実験を同じやり方でやり直すと、差は出なかった。新しい実験どうしでも、下がった実験と下がらなかった実験があり、結果が割れている。たとえば、同じ実験を別の人がもう一度やったら、今度は差が出なかった。だから、まだ「下がる」と決められない、ということです。
専門的に言うと(原典どおりの記録)

「スマホは、使わずに机に置いてあるだけで、勉強中の頭の働きを下げる」は判定保留。22本・43の結果をまとめた2023年の分析では、スマホがあるほうが成績はわずかに下がり(効果量マイナス0.14)、はっきり下がったのは記憶で、注意の課題では差がはっきりしなかった。一方、2017年の元の実験をそっくりやり直した2022年の研究では、机の上でも、かばんの中でも、部屋の外でも差は出なかった。影響があるとしても小さく、研究によって向きが割れている

対象
主柱は、スマホがあるときと無いときの成績を比べた22本の研究・43の結果のメタ分析(検索は2022年12月10日まで)。結果を記憶・注意・全般的な成績(数学や言葉のテスト)に分け、地域(北米・欧州・アジア)でも分けた。補助は、元の2017年の実験の事前登録の直接の追試(6つの条件)と、2023年の42人・2025年の144人の実験
効果
全体では、スマホがあるほうが成績がわずかに低かった(効果量 g = −0.14・95%信頼区間 −0.24〜−0.03)。記憶の課題は g = −0.23 ではっきり下がったが、注意の課題は g = −0.07、全般的な成績は g = 0.10 で差がはっきりしなかった。地域別ではアジア g = −0.39、北米 g = −0.03。元の実験の追試では、スマホの場所によって、どちらの課題にも差が無かった
限界
主柱の合算は「使うこと」と「そこにあること」を合わせたもので、電話がかかってくる場面の研究も入り、22本のうち5本は修士論文。ばらつきが大きい(I² = 61.84)。追試の本文には当たれておらず要旨のみ。新しい実験は42人(オンライン)で下がり、144人(実験室)で変わらず、向きが割れる。参加者はほとんど18歳以上の大人で、課題は数分の検査
見立
影響があるとしても小さく、はっきり下がる向きが出ているのは記憶の課題で、注意の課題では差がはっきりしない。元の実験は同じやり方でやり直すと再現しなかった。一方、記憶では2つのまとめが同じ向きを指し、全く影響が無いとも言い切れない。勉強のときにスマホをどこに置くべきかは、この記録には書かれていない

図で読む

動画で使った図解を、ノミヤとミチの会話つきで。1枚ずつ読めば、要点が順に分かります。

ポイント①

図1

22本の研究を、どうやってまとめたか?

802件と672件、合わせて1,474件の候補から《22本の研究・43の結果》にまとめた(1本の研究が複数の結果を報告するため)。
ノミヤ

ノミヤ: ドイツの研究者が、データベースで802件、元の論文を引用した論文から672件を探しました。合わせて1,474件です。

ミチ

ミチ: 1,474件から22本、ですか。

ノミヤ

ノミヤ: はい。重複を除いて、要旨を読んで、本文を読んで、残ったのが22本の研究です。これを1つにまとめる作業を、メタ分析といいます。

ミチ

ミチ: メタ分析って、なんですか?

ノミヤ

ノミヤ: 分かりやすく言うと、22本ぶんの実験を1つの表に並べて、まとめて計算し直す作業です。1つの実験だけでは分からないことが、まとめると見えてきます。

ポイント

802件と672件、合わせて1,474件の候補から22本の研究・43の結果にまとめた(1本の研究が複数の結果を報告するため)。

ポイント②

図2

記憶・注意・成績で分けると?

はっきり下がったのは記憶の課題(《マイナス0.23》)だけ。注意と全般的な成績は差がはっきりしない。
ノミヤ

ノミヤ: 記憶の課題、18の結果では、マイナス0.23で、はっきり下がっていました。

ミチ

ミチ: やっぱり。

ノミヤ

ノミヤ: ところが、注意の課題、19の結果では、マイナス0.07で、差ははっきりしませんでした。全般的な成績、6つの結果では、むしろプラス0.10でした。

ミチ

ミチ: マイナス0.23とかマイナス0.07って、どういう意味ですか?

ノミヤ

ノミヤ: 分かりやすく言うと、スマホがある組と無い組で、テストの点の差を計算した数字です。0なら差が無い。0に近いほど、差は小さいと思ってください。

ポイント

はっきり下がったのは記憶の課題(マイナス0.23)だけ。注意と全般的な成績は差がはっきりしない。

図3

地域で分けると?

アジアの研究ではマイナス0.39、北アメリカでは《マイナス0.03》でほぼ0。元の2017年の実験の結果も、幅の中に0が入っていた。
ノミヤ

ノミヤ: 地域で分けた結果です。アジアの研究、6つの結果では、マイナス0.39で、はっきり下がった。北アメリカの研究、25の結果では、マイナス0.03で、ほぼ0でした。

ミチ

ミチ: 元の2017年の実験も、北アメリカの研究ですよね。

ノミヤ

ノミヤ: そうなんです。しかも、元の2017年の実験の結果を見ると、4つの結果のどれも、本当の差がありそうな幅の中に0が入っています。

ミチ

ミチ: 幅の中に0が入ってる、ってどういうことですか?

ノミヤ

ノミヤ: たとえば、的当てで矢がだいたいこのへんに落ちそうだ、という幅のことです。その幅の中に0(差が無い)が入っているので、差が無い可能性も残っています。

ポイント

アジアの研究ではマイナス0.39、北アメリカではマイナス0.03でほぼ0。元の2017年の実験の結果も、幅の中に0が入っていた。

ポイント③

図4

元の実験をそっくりやり直すと?

場所3つと電源の入・切の《6つの条件》で比べても、どちらの課題にも差は出ず、元の実験は再現しなかった。
ノミヤ

ノミヤ: スマホの場所は、机の上、ポケットかかばんの中、部屋の外の3つ。電源は入と切。組み合わせて、6つの条件に分けました。

ミチ

ミチ: 覚えながら計算する課題って、図の『作業記憶』のことですか?

ノミヤ

ノミヤ: はい、同じです。覚えながら計算する力を、研究では作業記憶と呼びます。実験の前に、何を調べるか紙に書いて登録しておいたので、都合のいい結果だけ選べません。

ミチ

ミチ: ずるができない、ってことですね。

ノミヤ

ノミヤ: そうです。結果は、この実験は再現しなかった。覚えながら計算する課題にも、注意の課題にも、場所による差はありませんでした。

ポイント

場所3つと電源の入・切の6つの条件で比べても、どちらの課題にも差は出ず、元の実験は再現しなかった。

図5

新しい実験どうしでは?

2023年の《42人》の実験では下がり、2025年の144人の実験では変わらなかった。新しい実験どうしでも向きが割れている。
ノミヤ

ノミヤ: 去年、2025年の実験では、18歳から25歳の144人に、通知が鳴る設定のスマホを机の上に置いてもらいました。

ミチ

ミチ: 図に『群』とか『割り付けた』って出てきますけど、前の『組』と同じですか?

ノミヤ

ノミヤ: はい、同じです。スマホがある組と、無い組に、くじのように分けることを、研究では割り付けるといいます。

ミチ

ミチ: それで、成績はどうだったんですか?

ノミヤ

ノミヤ: 注意の課題の成績は、スマホが無い人と変わりませんでした。2023年の42人の実験では下がったので、向きが割れています。

ポイント

2023年の42人の実験では下がり、2025年の144人の実験では変わらなかった。新しい実験どうしでも向きが割れている。

まとめ(つまり、どう考える?)

影響があるとしても小さく、記憶の課題以外ははっきりしない。スマホをどこに置くべきかは、この記録には書かれていない。

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記事の全文を読む

机に置いてあるだけのスマホで、勉強中の頭の働きは下がるのか。下がったのは記憶の課題で、やり直すと差は出なかった

今回の命題は 「スマホは、使わずに机の上に置いてあるだけで、勉強中の頭の働き(覚える力や集中)を下げる」 です。出どころは、2017年の論文で、表題そのものが「自分のスマホがそこにあるだけで、使える頭の容量が減る」というものです。この論文の本文は無料で読めないため、あとから出た研究の記録で確かめました。

主な根拠は、2023年に行動科学の雑誌に載ったメタ分析です。22本の研究・43の結果をまとめると、スマホがあるほうが、成績はわずかに低くなりました(効果量 マイナス0.14)。0に近い、小さい差です。

中身を分けると、記憶の課題では マイナス0.23 ではっきり下がった一方、注意の課題では マイナス0.07 で差ははっきりしませんでした。数学や言葉のテストのような全般的な成績も、差ははっきりしません。しかもこの合算には、実技試験中に電話がかかってきた場面など、「使う」場面の研究も入っています。22本のうち5本は修士論文でした。地域で分けると、アジアの研究では下がり、北アメリカではほぼ0で、著者も理由を説明できていません。

2022年には、元の実験を同じ課題・同じ条件でやり直す追試が、事前登録のうえで行われました。スマホの場所(机の上・かばんの中・部屋の外)と電源の入・切の6つの条件で比べても、どちらの課題にも差は出ませんでした。この追試の本文には当たれておらず、要旨からの転記です。

新しい実験も割れています。2023年の 42人 の実験では、スマホがあると注意の検査の成績が下がりました。ただしオンラインのビデオ通話で行った小さな実験です。2025年の 144人 の実験では、通知が鳴る設定のスマホを目に入る机の上に置いても、注意の課題の成績は変わりませんでした。

参加者はほとんどが18歳以上の大人で、課題は数分の検査です。子どもの勉強や、学校のテストの点にそのまま当てはまるかは分かりません。

判定は保留です。 影響があるとしても小さく、記憶の課題では下がる向きが出ている一方、元の実験のやり直しと新しい実験では差が出ませんでした。勉強のときにスマホをどこに置くべきかは、この記録には書かれていません。

出典: Böttger T ほか (2023) Behavioral Sciences 13(9):751(CC BY 4.0)、Ruiz Pardo AC ほか (2022) Acta Psychologica 230:103717(CC BY 4.0)、Skowronek J ほか (2023) Scientific Reports 13(1):9363(CC BY 4.0)、Christodoulou A ほか (2025) European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education 15(5):74(CC BY 4.0)(いずれも2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・抜粋・和訳)。

出典・研究の限界・ライセンス表示

合算した結果(本文 3 Results 節・[引用])

区分結果の数g95% 信頼区間p
全体43−0.14−0.24 〜 −0.03< 0.05
記憶18−0.23−0.36 〜 −0.10< 0.001
注意19−0.07−0.21 〜 0.060.29
全般的な認知の成績60.10−0.52 〜 0.720.76

(結果の数は表1 の自由度(記憶 17・注意 18・全般 5)に1を足した値。[加工]・§1-2b 末尾)

  • ばらつき(異質性)は大きい: 全体で Q = 110.06(自由度 42)、I² = 61.84、p < 0.001。記憶 I² = 52.96、注意 I² = 44.29、全般 I² = 86.62。
  • 出版の偏り: ファネルプロットの目視で目立つ偏りは無いと書く(統計的な検定の値は書かれていない)。

地域別(本文 3 Results 節・表2・[引用])

地域結果の数g95% 信頼区間p
アジア6−0.39−0.57 〜 −0.21< 0.001
欧州10−0.20−0.46 〜 0.060.12
北米25−0.03−0.15 〜 0.090.60

(結果の数は表2 の自由度(北米 24・欧州 9・アジア 5)に1を足した値。[加工])。著者は、アジアで強く出た理由について「満足のいく説明は見つからなかった」と書く。

付録 Appendix A の表からの転記([引用])

研究付録の記載
Ward ほか (2017)(元の実験)記憶: g = −0.17(95% CI −0.47, 0.12)、g = −0.25(−0.58, 0.09)。注意: g = 0.07(−0.22, 0.36)、g = 0.07(−0.22, 0.37)。元の実験の4つの結果は、どれも信頼区間が0をまたいでいる
Ruiz Pardo・Minda (2022)(追試・台帳#2)記憶と注意の8つの結果: g = −0.17、−0.08、−0.03、0.14、0.00、0.00、0.13、0.13。どれも信頼区間が0をまたぐ。記載「The mere presence of the smartphone is not enough to affect cognitive performance」
Nakagawa ほか (2022)(日本の薬学部の学生)g = −0.25(95% CI −0.58, 0.09)。記載「The presence of the smartphone did not affect electroencephalography results or working memory」
Hartmann ほか (2020)記載「No overall effect of smartphone presence on short-term and perspective memory performance」。スマホへの依存が低い人では、スマホが無いほうが成績が良かった
Toader ほか (2022)医学生の実技試験で、電話がかかってきて気が散ったときの成績の低下。「置いてあるだけ」ではなく、使う(鳴る)場面の研究
Stone (2020)・Quanbrough (2018)・Moshiri (2018)・Aguila (2019)・Stavrum (2020)参考文献の記載はいずれも修士論文(Master's Thesis)。22本のうち5本は査読付き論文ではない

著者の結論(本文 Discussion): 「The present meta-analysis essentially confirms the Brain Drain effect」(このメタ分析は、ブレイン・ドレイン効果をおおむね裏付ける)。ただし同じ節で「They are strongest for memory and lower for attention and general cognitive performance」(記憶で最も強く、注意と全般的な成績では弱い)と書く。要旨は「a significant overall negative effect of smartphone use and presence」で、「使うこと」と「そこにあること」の両方を合わせた効果として書いている。

著者自身が挙げた限界

  1. 研究の数が少ない。 原文は「a total of 22 studies were included in the review, making an expansion of the data pool desirable in the coming years」。
  2. 研究によって結果の報告のしかたが違い、平均値と標準誤差がいつも手に入ったわけではない。
  3. ばらつきが大きい。 全体でも、3つの区分に分けても、有意なばらつきが残った。測った課題(Raven の行列検査・Trail Making Test など)が研究ごとに違うためだろうと書く。
  4. 年齢・社会的な背景・学歴・性別・スマホへの依存の度合いなど、効き方を変えうる個人の特徴が、多くの研究で報告されていない。

出典表示(ライセンス表示義務)

この回が使った一次情報の利用条件が求める4項目を、出典ごとに全件出しています(4件)。

論文カード: 1-2. 論文カード(一次情報・主たる評価対象=判定の主柱)

著者
Böttger T, Poschik M, Zierer K.(Europe PMC 応答 authorString からの転記)
出典
Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis/Behavioral Sciences(Basel)/査読済み(受理 2023-09-07)/第13巻 第9号 論文番号 751/2023年(オンライン公開 2023-09-11)/DOI: 10.3390/bs13090751
ライセンス
CC BY 4.0(Crossref の license(content-version: vor)= https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ・Europe PMC license: cc by・isOpenAccess: Y。全文の permissions「This article is an open access article distributed under the terms and conditions of the Creative Commons Attribution (CC BY) license」)。商用利用可・出典表記と変更の明示が義務
改変の有無
この回の図解は、原典の図の複製ではなく、原典の表から転記した数値をもとに当方が作図した(転記元: Böttger T, Poschik M, Zierer K. (2023) Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis. Behavioral Sciences 13(9):751. https://doi.org/10.3390/bs13090751 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)の本文 3 Results 節の値を転記し、和訳して ReeX Japan が作成)。原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。

論文カード: 補助A: 元の実験をそっくりやり直した追試(L2)

著者
Ruiz Pardo AC, Minda JP.
出典
Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017)/DOI: 10.1016/j.actpsy.2022.103717 / 36007374(PMCID なし)
ライセンス
CC BY 4.0(Crossref の license(content-version: vor)= http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ・2026-09-29 16:31:15 JST・HTTP 200。Unpaywall の oa_status: gold・出版社版 cc-by)。商用利用可・出典表記が義務
改変の有無
原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。

論文カード: 補助B: スマホがあると注意の検査の成績が下がった実験(L2)

著者
Skowronek J, Seifert A, Lindberg S.
出典
The mere presence of a smartphone reduces basal attentional performance/DOI: 10.1038/s41598-023-36256-4 / 37291199 / PMC10249922
ライセンス
CC BY 4.0(Crossref vor = by/4.0・全文の permissions「Open Access This article is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License」)。商用利用可・出典表記が義務
改変の有無
原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。

論文カード: 補助C: スマホがあっても注意の課題の成績が変わらなかった実験(L2)

著者
Christodoulou A, Roussos P.
出典
"Phone in the Room, Mind on the Roam": Investigating the Impact of Mobile Phone Presence on Distraction/DOI: 10.3390/ejihpe15050074 / 40422303 / PMC12110250
ライセンス
CC BY 4.0(Crossref vor = by/4.0・全文の permissions「distributed under the terms and conditions of the Creative Commons Attribution (CC BY) license」)。商用利用可・出典表記が義務
改変の有無
原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。

原本の出典表記(読み上げ・画面表示用の文言)

  • 出典: Böttger T, Poschik M, Zierer K. (2023) Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis. Behavioral Sciences 13(9):751. https://doi.org/10.3390/bs13090751 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・抜粋・和訳)
  • 出典: Ruiz Pardo AC, Minda JP. (2022) Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017). Acta Psychologica 230:103717. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2022.103717 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・和訳)
  • 出典: Skowronek J, Seifert A, Lindberg S. (2023) The mere presence of a smartphone reduces basal attentional performance. Scientific Reports 13(1):9363. https://doi.org/10.1038/s41598-023-36256-4 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・和訳)
  • 出典: Christodoulou A, Roussos P. (2025) "Phone in the Room, Mind on the Roam": Investigating the Impact of Mobile Phone Presence on Distraction. European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education 15(5):74. https://doi.org/10.3390/ejihpe15050074 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・和訳)
  • 参考: Parry DA. (2022) Does the mere presence of a smartphone impact cognitive performance? A meta-analysis of the "brain drain effect". PsyArXiv. https://doi.org/10.31234/osf.io/tnyda (CC BY 4.0・査読前の版・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・和訳)
検証の記録(常識検証プロトコル v1.0)
命題化テスト(T1〜T5)
#テスト結果
T1「Xすると Y になる」に書き直せるか通過。「スマホを、使わずに机の上に置いておくと(X)、勉強中の頭の働き(覚える力・注意の課題の成績)が下がる(Y)」
T2Y が観測できる形になっているか通過。作業記憶の課題(覚えながら計算する課題など)・注意の課題・学力テストの点数として、スマホがある条件とない条件で比べられている
T3一次データ源が存在しそうか通過。この効果をまとめたメタ分析(L2)、元の実験をそっくりやり直した追試(L2)、新しい実験(L2)があたりとして立った(§1-1)
T4どちらに転んでも番組になるか通過。→ §1-1 の自己申告を参照
T5YMYL 該当か弱く該当(子どもの学習・スマホの使い方)。特定の使い方を勧めない。「記録ではこうなっている」に留める
証拠台帳

```

検証回ID: M10-20261006-01

命題: 「スマホは、使わずに机の上に置いてあるだけで、勉強中の頭の働き(覚える力や集中)を下げる」

命題の出所: Ward AF ほか (2017) Brain Drain: The Mere Presence of One's Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity. J Assoc Consum Res 2(2):140-154

判定: 判定保留

判定日: 2026-09-29(JST)

```

#階層種別出典名URL実測日時(JST)HTTP取得方法再利用条件採否採否の理由
1L2メタ分析Böttger T, Poschik M, Zierer K. Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis. Behav Sci (Basel). 2023;13(9):751https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC10525686/fullTextXML2026-09-29 16:31:10200curl → Europe PMC REST API(core JSON・全文 XML)・Crossref API(license)CC BY 4.0(Crossref vor・Europe PMC・全文の permissions で一致)採用(判定の主柱)命題の X(スマホがあること)と Y(記憶・注意・成績)の研究を合算し、区分ごとの効果量を出している。命題を最も広く測った L2
2L2事前登録の直接の追試Ruiz Pardo AC, Minda JP. Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017). Acta Psychol. 2022;230:103717https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/search?query=EXT_ID:36007374%20AND%20SRC:MED&resultType=core&format=json (要旨)/ https://api.crossref.org/works/10.1016/j.actpsy.2022.103717 (license)2026-09-29 16:31:14・16:31:15200・200Europe PMC REST API(core JSON)・Crossref API・Unpaywall API。出版社の PDF は 403CC BY 4.0(Crossref vor)採用(補助A)命題の出所の実験を、同じ課題・同じ条件でやり直した記録。要旨と台帳#1 の付録の値だけを使う
3L2ランダム化した実験Skowronek J, Seifert A, Lindberg S. The mere presence of a smartphone reduces basal attentional performance. Sci Rep. 2023;13(1):9363https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC10249922/fullTextXML2026-09-29 16:31:12200Europe PMC REST API(core JSON・全文 XML)・Crossref APICC BY 4.0採用(補助B)命題を支持する向きの新しい実験。注意の課題で下がった
4L2ランダム化した実験Christodoulou A, Roussos P. "Phone in the Room, Mind on the Roam": Investigating the Impact of Mobile Phone Presence on Distraction. Eur J Investig Health Psychol Educ. 2025;15(5):74https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC12110250/fullTextXML2026-09-29 16:31:13200Europe PMC REST API(core JSON・全文 XML)・Crossref APICC BY 4.0採用(補助C)台帳#1 より新しい、命題に反する向きの実験。注意の課題で差が無かった
5L2(査読前の版)メタ分析Parry DA. Does the mere presence of a smartphone impact cognitive performance? A meta-analysis of the "brain drain effect". PsyArXiv 2022(査読後: Media Psychology 2023;27(5):737-762)https://api.crossref.org/works/10.31234/osf.io/tnyda2026-09-29 16:31:15200Crossref API(査読前の版の要旨)査読前の版 CC BY 4.0。査読後の版は license 記載なし参考(R2 の記録・台本では「査読前の版の要旨」と断って1回だけ触れる)台帳#1 より多い56の結果をまとめた別のメタ分析。向きは台帳#1 と同じ(作業記憶だけ有意)
6L2(出所)元の実験の論文Ward AF, Duke K, Gneezy A, Bos MW. Brain Drain: The Mere Presence of One's Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity. J Assoc Consum Res. 2017;2(2):140-154https://api.crossref.org/works/10.1086/6914622026-09-29 16:31:16200Crossref API(書誌のみ)本文は無償公開されておらず、Crossref に license の記載なし採用(出所の確認としてのみ)命題の出所。本文に当たっていないため数値は根拠にしない(効果量は台帳#1 の付録の転記のみ)
7L2検索の記録Europe PMC 検索(R1・R2 の式)https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/search2026-09-29 16:24〜16:29200Europe PMC REST API(core・lite)—R1・R2 の記録のみ検索式と件数は §1-4
反証チェック(R1〜R7)
R#探した対象探した範囲(検索式・DB名・年範囲)結果
R1反対の結論の一次研究(主柱は「全体でわずかに下がる」なので、下がらない向きと、もっと大きく下がる向きの両方を探した)①Europe PMC・brain drain smartphone presence meta-analysis(自由語・core・上位12件の表題を読んだ) ②Europe PMC・(TITLE:"smartphone" OR TITLE:"mobile phone" OR TITLE:"cell phone" OR TITLE:"cellphone") AND (TITLE:"presence" OR TITLE:"brain drain" OR TITLE:"mere")(20件・全件の表題を読んだ) ③Crossref・query.bibliographic=smartphone presence brain drain replication(上位5件)両方の向きがある。 下がらない向き: 台帳#2(事前登録の直接の追試・差なし)、台帳#4(144人・注意の課題で差なし)、Hartmann ほか (2020)(付録の記載・短期記憶と展望記憶に全体の効果なし)。下がる向き: 台帳#3(42人・注意の検査で下がった)、Shaer ほか (2024)(5〜8歳の子どもの脳波で、スマホがあると前頭部のシータ波が下がった。Pediatr Res 96(7):1699-1706・CC BY。成績ではなく脳波の研究なので本話の Y とは違い、採らない)。台帳#1 の中でも、注意の区分は差がはっきりせず(g = −0.07・p = 0.29)、台帳#3 の結果とは向きが合わない
R2より新しい/より大きい研究R1 の②の2023年以降分(Skowronek 2023・Christodoulou 2025・Shaer 2024 ほか)。R1 の①③で出た Parry のメタ分析台帳#1 より新しい合算は見当たらなかった。 台帳#1 より大きい合算は台帳#5(56の結果・7,093人)で、査読前の版の要旨では作業記憶だけ有意と、台帳#1 の「記憶だけ有意」と同じ向き。台帳#1 より新しい実験は台帳#3(2023・下がった)と台帳#4(2025・下がらなかった)で、割れている
R3撤回・取消・訂正Europe PMC の commentCorrectionList(台帳#1・#2・#3・#4)撤回・訂正の記載は無い(4本とも None)
R4測っていた指標のすり替え命題の Y(「頭の働き」「集中」)と、台帳#1〜#4 が測った Y を並べて確認該当あり(3つ)。 ①台帳#1 の全体の効果は「使うこと」と「そこにあること」を合わせたもので、付録には電話がかかってきて気が散る場面の研究(Toader 2022)も入っている。「置いてあるだけ」の効果より広いものを合算している。②「集中」と言われるものは、研究では注意の課題・作業記憶の課題・学力テストに分かれ、台帳#1 で有意なのは記憶の区分だけ。③実験の課題(数分の記憶や注意の検査)は、1時間の勉強や学校のテストの点そのものではない
R5資金源台帳#1〜#4 の Funding・Competing interests台帳#1 は外部資金なし・利益相反なし。台帳#4 は参加者に謝礼なし。台帳#2・#3 の資金源は本話で転記していない(台帳#2 は本文に当たれていない)。スマホや教育の事業者が資金を出した研究は、本話の採用分には見当たらなかった
R6母集団のズれ台帳#1〜#4 の対象者と、命題が想定する「勉強中の人(子どもを含む)」を突き合わせズれは3つ。 ①台帳#2〜#4 の参加者は18〜34歳の大人で、子どもではない。②台帳#1 の地域別では、アジアの研究(6つの結果)で g = −0.39 と強く、北米(25の結果)では g = −0.03 とほぼ0。日本の視聴者にどちらが近いかは分からず、著者も理由を説明できていない。③台帳#1 の付録の日本の研究(薬学部の学生)は、作業記憶に影響が無かったと書かれている
R7生存者バイアス/出版バイアス台帳#1 の研究の選び方、台帳#5 の検出力の指摘該当あり。 ①台帳#1 はファネルプロットの目視で偏りは無いと書くが、統計的な検定の値は無い。②台帳#1 の22本のうち5本は修士論文で、出版されていない研究も一部拾っている(偏りを減らす向き)。③台帳#5 は「この分野は検出力が全体に低い」と書き、小さな実験(台帳#3 は42人)では、偶然の大きな差が出やすく、出た研究が目立ちやすい
判定理由

判定: 判定保留

命題「スマホは、使わずに机の上に置いてあるだけで、勉強中の頭の働き(覚える力や集中)を下げる」について。

理由(3つ):

  1. 合算の効果は小さく、しかも「置いてあるだけ」より広いものを合わせている。 台帳#1(22本・43の結果・CC BY)の全体の効果は g = −0.14 で有意だが、電話がかかってくる場面なども入った「使うことと、そこにあること」の合算で、区分ごとでは記憶(g = −0.23)だけが有意、注意(g = −0.07)と全般的な成績(g = 0.10)は差がはっきりしなかった。
  2. 元の実験をそっくりやり直すと、差は出なかった。 台帳#2(事前登録の直接の追試・CC BY)は、スマホの場所と電源の6つの条件で、作業記憶の課題にも注意の課題にも差が無かった。台帳#1 の付録でも、元の実験(Ward 2017)の4つの結果は、どれも信頼区間が0をまたいでいる。
  3. 新しい実験どうしでも、向きが割れている。 台帳#3(42人・2023年)は注意の検査で下がり、台帳#4(144人・2025年)は注意の課題で差が無かった。台帳#1 の地域別でも、アジアでは下がり(g = −0.39)、北米ではほぼ0(g = −0.03)で、著者は理由を説明できていない。

プロトコル §4-3 の判定保留の条件のうち「L2 どうしが逆の結論」に当たる(台帳#1 の記憶の区分と台帳#3 は下がる向き、台帳#2 と台帳#4 は差が無い向き)。支持の条件「R1〜R7 を通しても覆らない」は、台帳#2 の追試の結果で満たせず、不支持の条件「支持側が L4/L5 に留まる」も、台帳#1・#3(L2)があるため満たさない。したがって判定保留とする。

保留の中で言えること(必ず添える限界つき):

  • 影響があるとしても小さい。 合算の効果は g = −0.14 で、0に近い(台帳#1。ばらつきが大きく、「使う」場面も入った合算)。
  • 下がる向きがはっきりしているのは記憶の課題で、注意の課題では差がはっきりしない(台帳#1。台帳#5 の査読前の版の要旨も、作業記憶だけ有意と同じ向き)。
  • 元の実験は、同じやり方でやり直すと再現しなかった(台帳#2。本文に当たれておらず、要旨からの転記)。

支持にしない理由: 追試(台帳#2)と新しい実験(台帳#4)で差が出ていない。合算の全体の効果は「使う」場面を含み、「置いてあるだけ」の効果とは言い切れない。

不支持にしない理由: 記憶の区分では、合算でも(台帳#1)、別のメタ分析の査読前の版でも(台帳#5)、下がる向きが有意に出ている。台帳#3 も下がる向き。

この回で言わないこと(YMYL・子どもの学習):

  • 「スマホを部屋の外に出すべき」「学校で禁止すべき」と言わない。台帳#1 の著者は学校での使い方について意見を書いているが、それは著者の意見で、本話の判定の根拠ではない。
  • スマホへの依存の度合いを診断めいた言い方で扱わない。

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