その習慣、本当に合ってる?
机のスマホで頭が鈍る、
やり直すと〇〇!?
スマホを机に置いておくだけで勉強中の頭の働きが下がるかは、まだはっきりしない。下がったのは覚える課題だけで、同じ実験をやり直すと差は出なかった。たとえば、一度だけ「ゲームの音がすると集中できない」となっても、もう一度試したら平気だった、というようなもの。
専門的に言うと(原典どおりの記録)
「スマホは、使わずに机に置いてあるだけで、勉強中の頭の働きを下げる」は判定保留。22本・43の結果をまとめた2023年の分析では、スマホがあるほうが成績はわずかに下がり(効果量マイナス0.14)、はっきり下がったのは記憶で、注意の課題では差がはっきりしなかった。一方、2017年の元の実験をそっくりやり直した2022年の研究では、机の上でも、かばんの中でも、部屋の外でも差は出なかった。影響があるとしても小さく、研究によって向きが割れている
- 対象
- 主柱は、スマホがあるときと無いときの成績を比べた22本の研究・43の結果のメタ分析(検索は2022年12月10日まで)。結果を記憶・注意・全般的な成績(数学や言葉のテスト)に分け、地域(北米・欧州・アジア)でも分けた。補助は、元の2017年の実験の事前登録の直接の追試(6つの条件)と、2023年の42人・2025年の144人の実験
- 効果
- 全体では、スマホがあるほうが成績がわずかに低かった(効果量 g = −0.14・95%信頼区間 −0.24〜−0.03)。記憶の課題は g = −0.23 ではっきり下がったが、注意の課題は g = −0.07、全般的な成績は g = 0.10 で差がはっきりしなかった。地域別ではアジア g = −0.39、北米 g = −0.03。元の実験の追試では、スマホの場所によって、どちらの課題にも差が無かった
- 限界
- 主柱の合算は「使うこと」と「そこにあること」を合わせたもので、電話がかかってくる場面の研究も入り、22本のうち5本は修士論文。ばらつきが大きい(I² = 61.84)。追試の本文には当たれておらず要旨のみ。新しい実験は42人(オンライン)で下がり、144人(実験室)で変わらず、向きが割れる。参加者はほとんど18歳以上の大人で、課題は数分の検査
- 見立
- 影響があるとしても小さく、はっきり下がる向きが出ているのは記憶の課題で、注意の課題では差がはっきりしない。元の実験は同じやり方でやり直すと再現しなかった。一方、記憶では2つのまとめが同じ向きを指し、全く影響が無いとも言い切れない。勉強のときにスマホをどこに置くべきかは、この記録には書かれていない
図で読む
動画で使った図解を、ノミヤとミチの会話つきで。1枚ずつ読めば、要点が順に分かります。
ポイント①
22本の研究を、どうやってまとめたか?

ノミヤ: ドイツの研究者が、データベースで802件、元の論文を引用した論文から672件を探しました。合わせて1,474件です。
ミチ: 1,474件から22本、ですか。
ノミヤ: はい。重複を除いて、要旨を読んで、本文を読んで、残ったのが22本の研究です。これを1つにまとめる作業を、メタ分析といいます。
ミチ: メタ分析って、なんですか?
ノミヤ: 分かりやすく言うと、22本ぶんの実験を1つの表に並べて、まとめて計算し直す作業です。1つの実験だけでは分からないことが、まとめると見えてきます。
802件と672件、合わせて1,474件の候補から22本の研究・43の結果にまとめた(1本の研究が複数の結果を報告するため)。
ポイント②
記憶・注意・成績で分けると?

ノミヤ: 記憶の課題、18の結果では、マイナス0.23で、はっきり下がっていました。
ミチ: やっぱり。
ノミヤ: ところが、注意の課題、19の結果では、マイナス0.07で、差ははっきりしませんでした。全般的な成績、6つの結果では、むしろプラス0.10でした。
ミチ: マイナス0.23とかマイナス0.07って、どういう意味ですか?
ノミヤ: 分かりやすく言うと、スマホがある組と無い組で、テストの点の差を計算した数字です。0なら差が無い。0に近いほど、差は小さいと思ってください。
はっきり下がったのは記憶の課題(マイナス0.23)だけ。注意と全般的な成績は差がはっきりしない。
地域で分けると?

ノミヤ: 地域で分けた結果です。アジアの研究、6つの結果では、マイナス0.39で、はっきり下がった。北アメリカの研究、25の結果では、マイナス0.03で、ほぼ0でした。
ミチ: 元の2017年の実験も、北アメリカの研究ですよね。
ノミヤ: そうなんです。しかも、元の2017年の実験の結果を見ると、4つの結果のどれも、本当の差がありそうな幅の中に0が入っています。
ミチ: 幅の中に0が入ってる、ってどういうことですか?
ノミヤ: たとえば、的当てで矢がだいたいこのへんに落ちそうだ、という幅のことです。その幅の中に0(差が無い)が入っているので、差が無い可能性も残っています。
アジアの研究ではマイナス0.39、北アメリカではマイナス0.03でほぼ0。元の2017年の実験の結果も、幅の中に0が入っていた。
ポイント③
元の実験をそっくりやり直すと?

ノミヤ: スマホの場所は、机の上、ポケットかかばんの中、部屋の外の3つ。電源は入と切。組み合わせて、6つの条件に分けました。
ミチ: 覚えながら計算する課題って、図の『作業記憶』のことですか?
ノミヤ: はい、同じです。覚えながら計算する力を、研究では作業記憶と呼びます。実験の前に、何を調べるか紙に書いて登録しておいたので、都合のいい結果だけ選べません。
ミチ: ずるができない、ってことですね。
ノミヤ: そうです。結果は、この実験は再現しなかった。覚えながら計算する課題にも、注意の課題にも、場所による差はありませんでした。
場所3つと電源の入・切の6つの条件で比べても、どちらの課題にも差は出ず、元の実験は再現しなかった。
新しい実験どうしでは?

ノミヤ: 去年、2025年の実験では、18歳から25歳の144人に、通知が鳴る設定のスマホを机の上に置いてもらいました。
ミチ: 図に『群』とか『割り付けた』って出てきますけど、前の『組』と同じですか?
ノミヤ: はい、同じです。スマホがある組と、無い組に、くじのように分けることを、研究では割り付けるといいます。
ミチ: それで、成績はどうだったんですか?
ノミヤ: 注意の課題の成績は、スマホが無い人と変わりませんでした。2023年の42人の実験では下がったので、向きが割れています。
2023年の42人の実験では下がり、2025年の144人の実験では変わらなかった。新しい実験どうしでも向きが割れている。
まとめ(つまり、どう考える?)
影響があるとしても小さく、記憶の課題以外ははっきりしない。スマホをどこに置くべきかは、この記録には書かれていない。
記事の全文を読む
机に置いてあるだけのスマホで、勉強中の頭の働きは下がるのか。下がったのは記憶の課題で、やり直すと差は出なかった
今回の命題は 「スマホは、使わずに机の上に置いてあるだけで、勉強中の頭の働き(覚える力や集中)を下げる」 です。出どころは、2017年の論文で、表題そのものが「自分のスマホがそこにあるだけで、使える頭の容量が減る」というものです。この論文の本文は無料で読めないため、あとから出た研究の記録で確かめました。
主な根拠は、2023年に行動科学の雑誌に載ったメタ分析です。22本の研究・43の結果をまとめると、スマホがあるほうが、成績はわずかに低くなりました(効果量 マイナス0.14)。0に近い、小さい差です。
中身を分けると、記憶の課題では マイナス0.23 ではっきり下がった一方、注意の課題では マイナス0.07 で差ははっきりしませんでした。数学や言葉のテストのような全般的な成績も、差ははっきりしません。しかもこの合算には、実技試験中に電話がかかってきた場面など、「使う」場面の研究も入っています。22本のうち5本は修士論文でした。地域で分けると、アジアの研究では下がり、北アメリカではほぼ0で、著者も理由を説明できていません。
2022年には、元の実験を同じ課題・同じ条件でやり直す追試が、事前登録のうえで行われました。スマホの場所(机の上・かばんの中・部屋の外)と電源の入・切の6つの条件で比べても、どちらの課題にも差は出ませんでした。この追試の本文には当たれておらず、要旨からの転記です。
新しい実験も割れています。2023年の 42人 の実験では、スマホがあると注意の検査の成績が下がりました。ただしオンラインのビデオ通話で行った小さな実験です。2025年の 144人 の実験では、通知が鳴る設定のスマホを目に入る机の上に置いても、注意の課題の成績は変わりませんでした。
参加者はほとんどが18歳以上の大人で、課題は数分の検査です。子どもの勉強や、学校のテストの点にそのまま当てはまるかは分かりません。
判定は保留です。 影響があるとしても小さく、記憶の課題では下がる向きが出ている一方、元の実験のやり直しと新しい実験では差が出ませんでした。勉強のときにスマホをどこに置くべきかは、この記録には書かれていません。
出典: Böttger T ほか (2023) Behavioral Sciences 13(9):751(CC BY 4.0)、Ruiz Pardo AC ほか (2022) Acta Psychologica 230:103717(CC BY 4.0)、Skowronek J ほか (2023) Scientific Reports 13(1):9363(CC BY 4.0)、Christodoulou A ほか (2025) European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education 15(5):74(CC BY 4.0)(いずれも2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・抜粋・和訳)。
出典・研究の限界・ライセンス表示
合算した結果(本文 3 Results 節・[引用])
| 区分 | 結果の数 | g | 95% 信頼区間 | p |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 43 | −0.14 | −0.24 〜 −0.03 | < 0.05 |
| 記憶 | 18 | −0.23 | −0.36 〜 −0.10 | < 0.001 |
| 注意 | 19 | −0.07 | −0.21 〜 0.06 | 0.29 |
| 全般的な認知の成績 | 6 | 0.10 | −0.52 〜 0.72 | 0.76 |
(結果の数は表1 の自由度(記憶 17・注意 18・全般 5)に1を足した値。[加工]・§1-2b 末尾)
- ばらつき(異質性)は大きい: 全体で Q = 110.06(自由度 42)、I² = 61.84、p < 0.001。記憶 I² = 52.96、注意 I² = 44.29、全般 I² = 86.62。
- 出版の偏り: ファネルプロットの目視で目立つ偏りは無いと書く(統計的な検定の値は書かれていない)。
地域別(本文 3 Results 節・表2・[引用])
| 地域 | 結果の数 | g | 95% 信頼区間 | p |
|---|---|---|---|---|
| アジア | 6 | −0.39 | −0.57 〜 −0.21 | < 0.001 |
| 欧州 | 10 | −0.20 | −0.46 〜 0.06 | 0.12 |
| 北米 | 25 | −0.03 | −0.15 〜 0.09 | 0.60 |
(結果の数は表2 の自由度(北米 24・欧州 9・アジア 5)に1を足した値。[加工])。著者は、アジアで強く出た理由について「満足のいく説明は見つからなかった」と書く。
付録 Appendix A の表からの転記([引用])
| 研究 | 付録の記載 |
|---|---|
| Ward ほか (2017)(元の実験) | 記憶: g = −0.17(95% CI −0.47, 0.12)、g = −0.25(−0.58, 0.09)。注意: g = 0.07(−0.22, 0.36)、g = 0.07(−0.22, 0.37)。元の実験の4つの結果は、どれも信頼区間が0をまたいでいる |
| Ruiz Pardo・Minda (2022)(追試・台帳#2) | 記憶と注意の8つの結果: g = −0.17、−0.08、−0.03、0.14、0.00、0.00、0.13、0.13。どれも信頼区間が0をまたぐ。記載「The mere presence of the smartphone is not enough to affect cognitive performance」 |
| Nakagawa ほか (2022)(日本の薬学部の学生) | g = −0.25(95% CI −0.58, 0.09)。記載「The presence of the smartphone did not affect electroencephalography results or working memory」 |
| Hartmann ほか (2020) | 記載「No overall effect of smartphone presence on short-term and perspective memory performance」。スマホへの依存が低い人では、スマホが無いほうが成績が良かった |
| Toader ほか (2022) | 医学生の実技試験で、電話がかかってきて気が散ったときの成績の低下。「置いてあるだけ」ではなく、使う(鳴る)場面の研究 |
| Stone (2020)・Quanbrough (2018)・Moshiri (2018)・Aguila (2019)・Stavrum (2020) | 参考文献の記載はいずれも修士論文(Master's Thesis)。22本のうち5本は査読付き論文ではない |
著者の結論(本文 Discussion): 「The present meta-analysis essentially confirms the Brain Drain effect」(このメタ分析は、ブレイン・ドレイン効果をおおむね裏付ける)。ただし同じ節で「They are strongest for memory and lower for attention and general cognitive performance」(記憶で最も強く、注意と全般的な成績では弱い)と書く。要旨は「a significant overall negative effect of smartphone use and presence」で、「使うこと」と「そこにあること」の両方を合わせた効果として書いている。
著者自身が挙げた限界
- 研究の数が少ない。 原文は「a total of 22 studies were included in the review, making an expansion of the data pool desirable in the coming years」。
- 研究によって結果の報告のしかたが違い、平均値と標準誤差がいつも手に入ったわけではない。
- ばらつきが大きい。 全体でも、3つの区分に分けても、有意なばらつきが残った。測った課題(Raven の行列検査・Trail Making Test など)が研究ごとに違うためだろうと書く。
- 年齢・社会的な背景・学歴・性別・スマホへの依存の度合いなど、効き方を変えうる個人の特徴が、多くの研究で報告されていない。
出典表示(ライセンス表示義務)
この回が使った一次情報の利用条件が求める4項目を、出典ごとに全件出しています(4件)。
論文カード: 1-2. 論文カード(一次情報・主たる評価対象=判定の主柱)
- 著者
- Böttger T, Poschik M, Zierer K.(Europe PMC 応答
authorStringからの転記) - 出典
- Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis/Behavioral Sciences(Basel)/査読済み(受理 2023-09-07)/第13巻 第9号 論文番号 751/2023年(オンライン公開 2023-09-11)/DOI: 10.3390/bs13090751
- ライセンス
- CC BY 4.0(Crossref の
license(content-version: vor)= https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ・Europe PMClicense: cc by・isOpenAccess: Y。全文の permissions「This article is an open access article distributed under the terms and conditions of the Creative Commons Attribution (CC BY) license」)。商用利用可・出典表記と変更の明示が義務 - 改変の有無
- この回の図解は、原典の図の複製ではなく、原典の表から転記した数値をもとに当方が作図した(転記元: Böttger T, Poschik M, Zierer K. (2023) Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis. Behavioral Sciences 13(9):751. https://doi.org/10.3390/bs13090751 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)の本文 3 Results 節の値を転記し、和訳して ReeX Japan が作成)。原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。
論文カード: 補助A: 元の実験をそっくりやり直した追試(L2)
- 著者
- Ruiz Pardo AC, Minda JP.
- 出典
- Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017)/DOI: 10.1016/j.actpsy.2022.103717 / 36007374(PMCID なし)
- ライセンス
- CC BY 4.0(Crossref の
license(content-version: vor)= http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ・2026-09-29 16:31:15 JST・HTTP 200。Unpaywall のoa_status: gold・出版社版 cc-by)。商用利用可・出典表記が義務 - 改変の有無
- 原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。
論文カード: 補助B: スマホがあると注意の検査の成績が下がった実験(L2)
- 著者
- Skowronek J, Seifert A, Lindberg S.
- 出典
- The mere presence of a smartphone reduces basal attentional performance/DOI: 10.1038/s41598-023-36256-4 / 37291199 / PMC10249922
- ライセンス
- CC BY 4.0(Crossref vor = by/4.0・全文の permissions「Open Access This article is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License」)。商用利用可・出典表記が義務
- 改変の有無
- 原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。
論文カード: 補助C: スマホがあっても注意の課題の成績が変わらなかった実験(L2)
- 著者
- Christodoulou A, Roussos P.
- 出典
- "Phone in the Room, Mind on the Roam": Investigating the Impact of Mobile Phone Presence on Distraction/DOI: 10.3390/ejihpe15050074 / 40422303 / PMC12110250
- ライセンス
- CC BY 4.0(Crossref vor = by/4.0・全文の permissions「distributed under the terms and conditions of the Creative Commons Attribution (CC BY) license」)。商用利用可・出典表記が義務
- 改変の有無
- 原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。
原本の出典表記(読み上げ・画面表示用の文言)
- 出典: Böttger T, Poschik M, Zierer K. (2023) Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis. Behavioral Sciences 13(9):751. https://doi.org/10.3390/bs13090751 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・抜粋・和訳)
- 出典: Ruiz Pardo AC, Minda JP. (2022) Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017). Acta Psychologica 230:103717. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2022.103717 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・和訳)
- 出典: Skowronek J, Seifert A, Lindberg S. (2023) The mere presence of a smartphone reduces basal attentional performance. Scientific Reports 13(1):9363. https://doi.org/10.1038/s41598-023-36256-4 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・和訳)
- 出典: Christodoulou A, Roussos P. (2025) "Phone in the Room, Mind on the Roam": Investigating the Impact of Mobile Phone Presence on Distraction. European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education 15(5):74. https://doi.org/10.3390/ejihpe15050074 (CC BY 4.0・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・和訳)
- 参考: Parry DA. (2022) Does the mere presence of a smartphone impact cognitive performance? A meta-analysis of the "brain drain effect". PsyArXiv. https://doi.org/10.31234/osf.io/tnyda (CC BY 4.0・査読前の版・2026年9月29日に利用)を加工して ReeX Japan が作成(要約・和訳)
検証の記録(常識検証プロトコル v1.0)
命題化テスト(T1〜T5)
| # | テスト | 結果 |
|---|---|---|
| T1 | 「Xすると Y になる」に書き直せるか | 通過。「スマホを、使わずに机の上に置いておくと(X)、勉強中の頭の働き(覚える力・注意の課題の成績)が下がる(Y)」 |
| T2 | Y が観測できる形になっているか | 通過。作業記憶の課題(覚えながら計算する課題など)・注意の課題・学力テストの点数として、スマホがある条件とない条件で比べられている |
| T3 | 一次データ源が存在しそうか | 通過。この効果をまとめたメタ分析(L2)、元の実験をそっくりやり直した追試(L2)、新しい実験(L2)があたりとして立った(§1-1) |
| T4 | どちらに転んでも番組になるか | 通過。→ §1-1 の自己申告を参照 |
| T5 | YMYL 該当か | 弱く該当(子どもの学習・スマホの使い方)。特定の使い方を勧めない。「記録ではこうなっている」に留める |
証拠台帳
```
検証回ID: M10-20261006-01
命題: 「スマホは、使わずに机の上に置いてあるだけで、勉強中の頭の働き(覚える力や集中)を下げる」
命題の出所: Ward AF ほか (2017) Brain Drain: The Mere Presence of One's Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity. J Assoc Consum Res 2(2):140-154
判定: 判定保留
判定日: 2026-09-29(JST)
```
| # | 階層 | 種別 | 出典名 | URL | 実測日時(JST) | HTTP | 取得方法 | 再利用条件 | 採否 | 採否の理由 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | L2 | メタ分析 | Böttger T, Poschik M, Zierer K. Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis. Behav Sci (Basel). 2023;13(9):751 | https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC10525686/fullTextXML | 2026-09-29 16:31:10 | 200 | curl → Europe PMC REST API(core JSON・全文 XML)・Crossref API(license) | CC BY 4.0(Crossref vor・Europe PMC・全文の permissions で一致) | 採用(判定の主柱) | 命題の X(スマホがあること)と Y(記憶・注意・成績)の研究を合算し、区分ごとの効果量を出している。命題を最も広く測った L2 |
| 2 | L2 | 事前登録の直接の追試 | Ruiz Pardo AC, Minda JP. Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017). Acta Psychol. 2022;230:103717 | https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/search?query=EXT_ID:36007374%20AND%20SRC:MED&resultType=core&format=json (要旨)/ https://api.crossref.org/works/10.1016/j.actpsy.2022.103717 (license) | 2026-09-29 16:31:14・16:31:15 | 200・200 | Europe PMC REST API(core JSON)・Crossref API・Unpaywall API。出版社の PDF は 403 | CC BY 4.0(Crossref vor) | 採用(補助A) | 命題の出所の実験を、同じ課題・同じ条件でやり直した記録。要旨と台帳#1 の付録の値だけを使う |
| 3 | L2 | ランダム化した実験 | Skowronek J, Seifert A, Lindberg S. The mere presence of a smartphone reduces basal attentional performance. Sci Rep. 2023;13(1):9363 | https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC10249922/fullTextXML | 2026-09-29 16:31:12 | 200 | Europe PMC REST API(core JSON・全文 XML)・Crossref API | CC BY 4.0 | 採用(補助B) | 命題を支持する向きの新しい実験。注意の課題で下がった |
| 4 | L2 | ランダム化した実験 | Christodoulou A, Roussos P. "Phone in the Room, Mind on the Roam": Investigating the Impact of Mobile Phone Presence on Distraction. Eur J Investig Health Psychol Educ. 2025;15(5):74 | https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC12110250/fullTextXML | 2026-09-29 16:31:13 | 200 | Europe PMC REST API(core JSON・全文 XML)・Crossref API | CC BY 4.0 | 採用(補助C) | 台帳#1 より新しい、命題に反する向きの実験。注意の課題で差が無かった |
| 5 | L2(査読前の版) | メタ分析 | Parry DA. Does the mere presence of a smartphone impact cognitive performance? A meta-analysis of the "brain drain effect". PsyArXiv 2022(査読後: Media Psychology 2023;27(5):737-762) | https://api.crossref.org/works/10.31234/osf.io/tnyda | 2026-09-29 16:31:15 | 200 | Crossref API(査読前の版の要旨) | 査読前の版 CC BY 4.0。査読後の版は license 記載なし | 参考(R2 の記録・台本では「査読前の版の要旨」と断って1回だけ触れる) | 台帳#1 より多い56の結果をまとめた別のメタ分析。向きは台帳#1 と同じ(作業記憶だけ有意) |
| 6 | L2(出所) | 元の実験の論文 | Ward AF, Duke K, Gneezy A, Bos MW. Brain Drain: The Mere Presence of One's Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity. J Assoc Consum Res. 2017;2(2):140-154 | https://api.crossref.org/works/10.1086/691462 | 2026-09-29 16:31:16 | 200 | Crossref API(書誌のみ) | 本文は無償公開されておらず、Crossref に license の記載なし | 採用(出所の確認としてのみ) | 命題の出所。本文に当たっていないため数値は根拠にしない(効果量は台帳#1 の付録の転記のみ) |
| 7 | L2 | 検索の記録 | Europe PMC 検索(R1・R2 の式) | https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/search | 2026-09-29 16:24〜16:29 | 200 | Europe PMC REST API(core・lite) | — | R1・R2 の記録のみ | 検索式と件数は §1-4 |
反証チェック(R1〜R7)
| R# | 探した対象 | 探した範囲(検索式・DB名・年範囲) | 結果 |
|---|---|---|---|
| R1 | 反対の結論の一次研究(主柱は「全体でわずかに下がる」なので、下がらない向きと、もっと大きく下がる向きの両方を探した) | ①Europe PMC・brain drain smartphone presence meta-analysis(自由語・core・上位12件の表題を読んだ) ②Europe PMC・(TITLE:"smartphone" OR TITLE:"mobile phone" OR TITLE:"cell phone" OR TITLE:"cellphone") AND (TITLE:"presence" OR TITLE:"brain drain" OR TITLE:"mere")(20件・全件の表題を読んだ) ③Crossref・query.bibliographic=smartphone presence brain drain replication(上位5件) | 両方の向きがある。 下がらない向き: 台帳#2(事前登録の直接の追試・差なし)、台帳#4(144人・注意の課題で差なし)、Hartmann ほか (2020)(付録の記載・短期記憶と展望記憶に全体の効果なし)。下がる向き: 台帳#3(42人・注意の検査で下がった)、Shaer ほか (2024)(5〜8歳の子どもの脳波で、スマホがあると前頭部のシータ波が下がった。Pediatr Res 96(7):1699-1706・CC BY。成績ではなく脳波の研究なので本話の Y とは違い、採らない)。台帳#1 の中でも、注意の区分は差がはっきりせず(g = −0.07・p = 0.29)、台帳#3 の結果とは向きが合わない |
| R2 | より新しい/より大きい研究 | R1 の②の2023年以降分(Skowronek 2023・Christodoulou 2025・Shaer 2024 ほか)。R1 の①③で出た Parry のメタ分析 | 台帳#1 より新しい合算は見当たらなかった。 台帳#1 より大きい合算は台帳#5(56の結果・7,093人)で、査読前の版の要旨では作業記憶だけ有意と、台帳#1 の「記憶だけ有意」と同じ向き。台帳#1 より新しい実験は台帳#3(2023・下がった)と台帳#4(2025・下がらなかった)で、割れている |
| R3 | 撤回・取消・訂正 | Europe PMC の commentCorrectionList(台帳#1・#2・#3・#4) | 撤回・訂正の記載は無い(4本とも None) |
| R4 | 測っていた指標のすり替え | 命題の Y(「頭の働き」「集中」)と、台帳#1〜#4 が測った Y を並べて確認 | 該当あり(3つ)。 ①台帳#1 の全体の効果は「使うこと」と「そこにあること」を合わせたもので、付録には電話がかかってきて気が散る場面の研究(Toader 2022)も入っている。「置いてあるだけ」の効果より広いものを合算している。②「集中」と言われるものは、研究では注意の課題・作業記憶の課題・学力テストに分かれ、台帳#1 で有意なのは記憶の区分だけ。③実験の課題(数分の記憶や注意の検査)は、1時間の勉強や学校のテストの点そのものではない |
| R5 | 資金源 | 台帳#1〜#4 の Funding・Competing interests | 台帳#1 は外部資金なし・利益相反なし。台帳#4 は参加者に謝礼なし。台帳#2・#3 の資金源は本話で転記していない(台帳#2 は本文に当たれていない)。スマホや教育の事業者が資金を出した研究は、本話の採用分には見当たらなかった |
| R6 | 母集団のズれ | 台帳#1〜#4 の対象者と、命題が想定する「勉強中の人(子どもを含む)」を突き合わせ | ズれは3つ。 ①台帳#2〜#4 の参加者は18〜34歳の大人で、子どもではない。②台帳#1 の地域別では、アジアの研究(6つの結果)で g = −0.39 と強く、北米(25の結果)では g = −0.03 とほぼ0。日本の視聴者にどちらが近いかは分からず、著者も理由を説明できていない。③台帳#1 の付録の日本の研究(薬学部の学生)は、作業記憶に影響が無かったと書かれている |
| R7 | 生存者バイアス/出版バイアス | 台帳#1 の研究の選び方、台帳#5 の検出力の指摘 | 該当あり。 ①台帳#1 はファネルプロットの目視で偏りは無いと書くが、統計的な検定の値は無い。②台帳#1 の22本のうち5本は修士論文で、出版されていない研究も一部拾っている(偏りを減らす向き)。③台帳#5 は「この分野は検出力が全体に低い」と書き、小さな実験(台帳#3 は42人)では、偶然の大きな差が出やすく、出た研究が目立ちやすい |
判定理由
判定: 判定保留
命題「スマホは、使わずに机の上に置いてあるだけで、勉強中の頭の働き(覚える力や集中)を下げる」について。
理由(3つ):
- 合算の効果は小さく、しかも「置いてあるだけ」より広いものを合わせている。 台帳#1(22本・43の結果・CC BY)の全体の効果は g = −0.14 で有意だが、電話がかかってくる場面なども入った「使うことと、そこにあること」の合算で、区分ごとでは記憶(g = −0.23)だけが有意、注意(g = −0.07)と全般的な成績(g = 0.10)は差がはっきりしなかった。
- 元の実験をそっくりやり直すと、差は出なかった。 台帳#2(事前登録の直接の追試・CC BY)は、スマホの場所と電源の6つの条件で、作業記憶の課題にも注意の課題にも差が無かった。台帳#1 の付録でも、元の実験(Ward 2017)の4つの結果は、どれも信頼区間が0をまたいでいる。
- 新しい実験どうしでも、向きが割れている。 台帳#3(42人・2023年)は注意の検査で下がり、台帳#4(144人・2025年)は注意の課題で差が無かった。台帳#1 の地域別でも、アジアでは下がり(g = −0.39)、北米ではほぼ0(g = −0.03)で、著者は理由を説明できていない。
プロトコル §4-3 の判定保留の条件のうち「L2 どうしが逆の結論」に当たる(台帳#1 の記憶の区分と台帳#3 は下がる向き、台帳#2 と台帳#4 は差が無い向き)。支持の条件「R1〜R7 を通しても覆らない」は、台帳#2 の追試の結果で満たせず、不支持の条件「支持側が L4/L5 に留まる」も、台帳#1・#3(L2)があるため満たさない。したがって判定保留とする。
保留の中で言えること(必ず添える限界つき):
- 影響があるとしても小さい。 合算の効果は g = −0.14 で、0に近い(台帳#1。ばらつきが大きく、「使う」場面も入った合算)。
- 下がる向きがはっきりしているのは記憶の課題で、注意の課題では差がはっきりしない(台帳#1。台帳#5 の査読前の版の要旨も、作業記憶だけ有意と同じ向き)。
- 元の実験は、同じやり方でやり直すと再現しなかった(台帳#2。本文に当たれておらず、要旨からの転記)。
支持にしない理由: 追試(台帳#2)と新しい実験(台帳#4)で差が出ていない。合算の全体の効果は「使う」場面を含み、「置いてあるだけ」の効果とは言い切れない。
不支持にしない理由: 記憶の区分では、合算でも(台帳#1)、別のメタ分析の査読前の版でも(台帳#5)、下がる向きが有意に出ている。台帳#3 も下がる向き。
この回で言わないこと(YMYL・子どもの学習):
- 「スマホを部屋の外に出すべき」「学校で禁止すべき」と言わない。台帳#1 の著者は学校での使い方について意見を書いているが、それは著者の意見で、本話の判定の根拠ではない。
- スマホへの依存の度合いを診断めいた言い方で扱わない。
