その習慣、本当に合ってる?
日本の労働時間、
世界の中では〇〇!?
日本人が1年に働く時間の平均は、もう世界の上のほうではない。でも、とても長く働く人の割合は、まだ多いほうだった。たとえば、クラスの平均の勉強時間はふつうでも、夜遅くまで勉強する子だけを数えると多いクラス、というようなもの。だから、見る数字で答えが変わる。
専門的に言うと(原典どおりの記録)
平均の労働時間で見れば日本はもう上位ではない。ただし週50時間以上働く人の割合はOECD平均より高く、上位2割に残っている
- 対象
- 年間実労働時間は各国の就業者全員(パートタイムを含む)の平均で、OECD 自身が「時系列の比較のためのもので、ある年の水準を国どうしで比べる用途には向かない。出典が国ごとに違うため」と注記している。長時間労働者の割合は15〜64歳の就業者(雇用者+自営)の主な仕事について、普段の週労働時間が50時間以上・60時間以上の人の割合で、日本と韓国だけは「普段の」ではなく「実際の」時間。国内の年間総実労働時間は事業所規模5人以上の事業所調査(毎月勤労統計調査)、週60時間以上の雇用者の割合は世帯調査(労働力調査・非農林業雇用者・月末1週間)
- 効果
- 就業者1人あたり年間実労働時間(2024年)は日本 1,617.381 時間で43の国・地域中28位。OECD平均 1,741.13、1位ペルー 2,263、3位メキシコ 2,214.9、9位韓国 1,865、14位アメリカ 1,795.906、43位ドイツ 1,334.4。日本の推移は1970年 2,243、1990年 2,031(同年のOECD平均 1,871.605・アメリカ 1,878.419 を上回る)、2024年 1,617.381。週50時間以上働く就業者の割合(2024年)は日本 15.574% で45中7位。1位メキシコ 26.414、2位トルコ 25.701、6位韓国 15.756、OECD平均 12.31、イギリス 10.661、フランス 9.607、ドイツ 4.978。週60時間以上は日本 5.273% で44中7位(OECD平均 4.995)。日本の週50時間以上の割合は2002年 29.64% から2024年 15.574% へ低下。国内では2024年の年間総実労働時間が就業形態計 1,643 時間・一般労働者 1,946 時間・パートタイム労働者 962 時間、パートタイム労働者比率 32.2%。週60時間以上の雇用者の割合は2000年 12.0% から2024年 4.6%(631万人から269万人)へ
- 限界
- OECD の年間実労働時間は作成者自身が水準の国際比較に向かないと明記しており、本話は順位の細かい違いを読まず「1位か下半分か」だけを読んだ。長時間労働者の割合は日本と韓国だけ「実際の」時間で集計されており、休んだ週を含むため他国より低めに出ている可能性がある(向きは日本に有利)。毎月勤労統計調査は事業所規模5人以上が対象で、賃金の払われない残業は記録に残らない。同調査の2004〜2011年分は「時系列比較のための推計値」で、労働力調査の2011年は岩手・宮城・福島を除く。OECD が日本の年間労働時間の算出に使っている国内統計の名称と不払い残業の扱いは未確認。アメリカは長時間労働者の割合の系列に収録が無く、ILOSTAT には日本の実労働時間が収録されていない。長時間労働の健康影響は本話では扱っていない
- 見立
- 命題の中心は「世界でいちばん」「どの国よりも」であり、平均で測っても(43中28位・OECD平均より短い)、長く働く人の割合で測っても(45中7位・1位はメキシコ)、記録と合わない。ただし同じ公的統計の中に反対向きの証拠があり、週50時間以上の割合はOECD平均より高く、イギリス・フランス・ドイツを大きく上回り、フルタイムの一般労働者だけなら年間 1,946 時間で就業形態計より約300時間長い。「長く働く人が多い国だ」という弱い形なら支持できたが、命題はそう言っていない。1990年には日本の年間労働時間がOECD平均もアメリカも上回っていたので、命題は過去には記録と合っていた。合わなくなったのは、パートタイム労働者比率の上昇と週60時間以上の雇用者の半減という、日本の側の変化による。保留にしなかったのは、両側とも L1 で、データ源がすべて機械取得でき、母集団のズれの向きが分かっており、1位との差(600時間以上)が測り方の違いで埋まる大きさではないため。働きすぎを測る物差しは3本あり、どれで測るかで答えが変わる。どの物差しでも日本は1位ではなく、それでも長時間労働者の割合では上位2割に残っている
図で読む
動画で使った図解を、クラタとミチの会話つきで。1枚ずつ読めば、要点が順に分かります。
ポイント①
日本の年間労働時間は、世界で何位?

ミチ: 先生、日本は「世界一働く国」ってよく聞きますけど、本当に1位なんですか。
クラタ: 1位ではありません。2024年、43の国と地域のうち、日本は28位です。1人あたり年間1,617時間でした。
ミチ: 28位ってどれくらいですか。43人のクラスがあったら、28番目ということですか。
クラタ: そのとおりです。43人のクラスなら、上から数えて28番目。つまり、真ん中より下ということです。OECDの平均は1,741時間で、日本はそれより120時間ほど短い。
ミチ: 1位のペルーは2,263時間。日本との差は600時間以上もあるんですね。
日本は43か国・地域中28位で、OECD平均より短い。1位ペルーとは600時間以上の差。
ポイント②
50年で、日本の労働時間はどう変わった?

クラタ: 日本の年間労働時間は、1970年が2,243時間、1990年が2,031時間、そして2024年が1,617時間です。
ミチ: 50年で600時間以上も減ってるんですね。
クラタ: しかも、1990年の日本2,031時間は、当時のOECD平均1,872時間やアメリカ1,878時間より多かった。つまり、「働きすぎ」のイメージは昔は記録と合っていたんです。
ミチ: 昔は本当だったんですね。でも、今も職場が忙しそうなのはなぜですか。
クラタ: パートで働く人が増えたからです。全体の平均は下がっても、フルタイムの人だけで見ると、今も1,946時間あります。
1970年から2024年で日本の年間労働時間は600時間以上減った。1990年はOECD平均・米国を上回っていた。
長く働く人の割合では、日本は何位?

ミチ: さっきは平均の話でしたよね。今度は何を比べるんですか。
クラタ: 「週50時間以上働いている人」が、働く人全体の何%いるかです。2024年、45の国と地域で比べると、日本は15.6%で7位でした。
ミチ: 7位。さっきの28位とぜんぜん違いますね。じゃあ、こっちの数え方なら世界一ですか。
クラタ: いいえ、違います。平均は下半分でも、長く働く人の割合なら上位2割、という意味です。つまり、1位メキシコ26.4%、6位韓国15.8%には日本の15.6%は届きませんが、OECD平均12.3%よりは高いんです。
ミチ: 上のほうだけど、いちばんじゃない、ってことですね。
日本は45の国・地域中7位で、OECD平均より高いが1位ではない。
ポイント③
その順位、そのまま比べていい数字?

ミチ: 「主柱1」とか「主柱2」、あと「水準」。むずかしい言葉が多いです。
クラタ: すみません、言い換えると、主柱1は最初のデータ、年間の労働時間のこと。主柱2は2つ目のデータ、長く働く人の割合のことです。水準は「その年その年の高さ」くらいの意味です。
ミチ: つまり、その「高さ」を国どうしでそのまま比べたら、だめなんですか。
クラタ: OECD自身が「向かない」と言っています。数え方が国によって違うからです。割合の統計も、日本と韓国だけ少し違います。だから、27位か28位のような小さな順位の違いは読みません。でも、日本と1位の差600時間以上は別です。数え方の違いだけでは、こんなに大きな差になりません。
ミチ: 細かい順位じゃなくて、1位か下半分かくらいで見る、ってことですね。数え方の違いはどっちの統計にもあるんですね。
OECD自身が、ある年の水準を国どうしで比べる用途には向かないと注記している。
その数字は、誰の何を測ったもの?

ミチ: さっきから、いろんな数字が出てきました。みんな同じ人たちを調べた数字なんですか。
クラタ: いいえ、実は4つの統計で、対象が少しずつ違います。年間労働時間はパートも含めた就業者全員。長く働く人の割合は15〜64歳で、主な仕事についている人だけです。国内の年間総実労働時間と週60時間以上の割合は、また別の統計です。
ミチ: 年間総実労働時間って、さっきの年間労働時間と同じ数字ですか。それと、さっきは週50時間以上でしたよね。ここで60時間になるのはなぜですか。
クラタ: どちらも別です。年間総実労働時間は、5人以上の会社に聞いた、日本だけの調査です。60時間という区切りは、国の「過労死を防ぐ目標」が使う区切りだからです。この割合は家庭に聞く「世帯調査」で、月末の1週間だけを見ています。
ミチ: だから、そのまま並べて比べるのは、むずかしいんですね。
同じ「労働時間」でも、4つの統計は対象も調べ方も違う。
まとめ(つまり、どう考える?)
測り方によって答えが変わる。平均でも割合でも1位ではないが、長く働く人の割合では上位に残っている。
記事の全文を読む
「日本は世界一働く国」を数えたら、平均は43か国中28位で、週50時間以上働く人の割合は7位だった
今回の命題は 「日本は世界でいちばん労働時間が長い国で、日本で働く人は、ほかのどの国の人より長く働いている」 です。出所は一般向けの科学記事と企業サイトの記事、そしてイギリスの医学誌ランセットの地域版の論説(2021年)。論説は「日本では働きすぎがあまりに一般的で、過労死という法律用語があるほどだ」と書いています。
まず平均。OECDが公開する就業者1人あたりの年間実労働時間を直接取りました。2024年、43の国と地域のうち日本は 28位、1,617時間。OECD平均1,741時間より短く、1位のペルー2,263時間とは600時間以上の開きがあります。ただし作成者自身が「ある年の水準を国どうしで比べる用途には向かない」と注記しているため、「1位か、下半分か」だけを読みました。
時系列は本来の用途です。日本は 1970年2,243時間、1990年2,031時間、2024年1,617時間。1990年にはOECD平均(1,872時間)もアメリカ(1,878時間)も上回っていました。命題は過去には記録と合っていて、合わなくなったのは日本の側が変わったからです。
平均が下がった理由は、厚生労働省の過労死等防止対策白書(令和6年度版)が書いています。パートタイム労働者の比率が 32.2% まで上がったこと。2024年の年間総実労働時間は全体で1,643時間、フルタイムの一般労働者は 1,946時間、パートタイム労働者は962時間でした。
次に、長く働く人の割合。主な仕事で週50時間以上働く就業者は、2024年の日本で 15.6%、45の国と地域のうち 7位。OECD平均12.3%、イギリス10.7%、フランス9.6%、ドイツ5.0%を上回ります。しかし1位はメキシコ26.4%、2位トルコ25.7%で、6位の韓国15.8%にもわずかに届きません。週60時間以上でも日本は5.3%で7位です。
国内でも減っています。週60時間以上働く雇用者の割合は 2000年12.0%から2024年4.6%へ、人数では631万人から269万人へ。韓国は2000年の55.1%から15.8%へと、日本より速く下がりました。
限界を4つ。日本と韓国だけは「普段の」ではなく「実際の」時間で集計され、割合は低めに出ている可能性があります。白書の図には2004年から2011年の推計値が含まれます。事業所の統計は規模5人以上が対象で、賃金の払われない残業は記録に残りません。OECDの日本の値がどの国内統計から作られているかは、確かめられませんでした。
判定は不支持です。 「世界でいちばん」は、平均で測っても、長く働く人の割合で測っても、記録と合いません。ただし「長く働く人が多い国だ」という弱い形なら、同じ公的統計が支持します。物差しは3本あり、どれで測るかで答えが変わる。どの物差しでも日本は1位ではなく、それでも長時間労働者の割合では上位2割に残っている。記録が言っているのは、その両方です。
出典: OECD (2026), Average annual hours actually worked per worker および Incidence of employment by long usual weekly hours worked, OECD Data Explorer (accessed on 11 September 2026) を加工して ReeX Japan が作成(小数第1位への丸め)。「令和6年度 過労死等防止対策白書」(厚生労働省)(2026年9月11日に利用)を加工して ReeX Japan が作成。資料出所は厚生労働省「毎月勤労統計調査」および総務省「労働力調査」。
出典・研究の限界・ライセンス表示
この回の一次データは公的統計です。学術論文の論文カードはありません。
出典表示(ライセンス表示義務)
この回が使った一次情報の利用条件が求める4項目を、出典ごとに全件出しています(5件)。
データカード: 1-2. データカード(一次情報・主たる評価対象)[1枚目]
- 著者
- OECD(経済協力開発機構)。各国の統計当局の調査を OECD が集計
- 出典
- OECD「Average annual hours actually worked per worker」(就業者1人あたり年間実労働時間)・データフロー
OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_AVG_ANN_HRS_WKD,1.0/https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_AVG_ANN_HRS_WKD,1.0/all?startPeriod=2019&format=csvfilewithlabels - ライセンス
- OECD Terms and Conditions(2024年7月1日改定)「3. Data – Permitted Use」([引用])「you can extract from, download, copy, adapt, print, distribute, share and embed Data for any purpose, even for commercial use. You must give appropriate credit to the OECD by using the citation associated with the relevant Data, or, if no specific citation is available, you must cite the source information using the following format: OECD (year), (dataset name), (data source) DOI or URL (accessed on (date)).」商用利用を含むあらゆる目的で利用でき、義務は所定の様式での出典表記。URL: https://www.oecd.org/en/about/terms-conditions.html (2026-09-11 11:46 JST・ブラウザで HTTP 200。curl は 403 で弾かれる)
- 改変の有無
- この回の図解は、原典の図の複製ではなく、原典の表から転記した数値をもとに当方が作図した(転記元: OECD (2026), Incidence of employment by long usual weekly hours worked, OECD Data Explorer https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_EMP_LNG_USL_WK_HRS,1.0/ (accessed on 11 September 2026) を加工して ReeX Japan が作成(45の国・地域から9つを抜粋。値は API 応答のまま)。再利用条件は OECD Terms and Conditions(商用利用を含むあらゆる目的で利用可・所定様式の出典表記が義務))。原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。
データカード: 1-2. データカード(一次情報・主たる評価対象)[2枚目]
- 著者
- OECD。各国の労働力調査を OECD が集計
- 出典
- OECD「Incidence of employment by long usual weekly hours worked」(週の労働時間が長い就業者の割合)・データフロー
OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_EMP_LNG_USL_WK_HRS,1.0/https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_EMP_LNG_USL_WK_HRS,1.0/all?startPeriod=2022&format=csvfilewithlabels - ライセンス
- 同上(OECD Terms and Conditions「3. Data – Permitted Use」・商用利用可・所定様式の出典表記が義務)
- 改変の有無
- 原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。
データカード: 1-2. データカード(一次情報・主たる評価対象)[3枚目]
- 著者
- 厚生労働省
- 出典
- 厚生労働省「令和6年度 過労死等防止対策白書」第1章(2025年10月28日公表)。資料出所は厚生労働省「毎月勤労統計調査」(事業所規模5人以上・調査産業計)と総務省「労働力調査」(非農林業雇用者)/https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/r7karoushi-1.pdf (白書の索引ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/25/index.html )
- ライセンス
- 公共データ利用規約(第1.0版)PDL1.0(厚生労働省「著作権・リンク・免責事項」ページに明記。商用利用可、出典の記載が必要、編集・加工した場合はその旨を出典とは別に記載する義務あり)。URL: https://www.mhlw.go.jp/chosakuken/index.html
- 改変の有無
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データカード: 1-2. データカード(一次情報・主たる評価対象)[4枚目]
- 著者
- 厚生労働省
- 出典
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年分結果確報」第2表(月間実労働時間及び出勤日数)・事業所規模5人以上・調査産業計/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/25cr/xls/25cc02r.xlsx
- ライセンス
- 同上(PDL1.0)
- 改変の有無
- 原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。
データカード: 1-2. データカード(一次情報・主たる評価対象)[5枚目]
- 著者
- 総務省統計局
- 出典
- 総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)平均結果の概要」表Ⅰ-9(雇用形態、週間就業時間別雇用者の割合の推移)・休業者を除く雇用者/https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/gaiyou.pdf
- ライセンス
- 公共データ利用規約(第1.0版)PDL1.0(総務省統計局「利用規約」に明記。「商用利用も可能です。また、数値データ、簡単な表・グラフ等は著作権の対象ではありません」・CC BY 4.0 と互換)。URL: https://www.stat.go.jp/info/riyou.html
- 改変の有無
- 原本の出典表記が、原典データを加工して当方が作成した旨を明示している(下の「原本の出典表記」を参照)。
原本の出典表記(読み上げ・画面表示用の文言)
- 出典: OECD (2026), Average annual hours actually worked per worker, OECD Data Explorer https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_AVG_ANN_HRS_WKD,1.0/ (accessed on 11 September 2026) を加工して ReeX Japan が作成(小数第1位への丸め・抜粋)
- 出典: OECD (2026), Incidence of employment by long usual weekly hours worked, OECD Data Explorer https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_EMP_LNG_USL_WK_HRS,1.0/ (accessed on 11 September 2026) を加工して ReeX Japan が作成(小数第1位への丸め・抜粋)
- 出典:「令和6年度 過労死等防止対策白書」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/25/index.html (2026年9月11日に利用)を加工して ReeX Japan が作成。資料出所は厚生労働省「毎月勤労統計調査」および総務省「労働力調査」
- 出典:「毎月勤労統計調査 令和7年分結果確報」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/25cr/25cr.html (2026年9月11日に利用)
- 出典:「労働力調査(基本集計)2025年平均結果の概要」(総務省統計局)https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/index.html (2026年9月11日に利用)
検証の記録(常識検証プロトコル v1.0)
命題化テスト(T1〜T5)
命題を選ぶ前に、次の5項目を通した。T4 の自己申告は、命題を採用するかどうかを決める前に書いた。
| # | テスト | 本話での判定 |
|---|---|---|
| T1 | 「Xすると Y になる」に書き直せるか | 合格。 「日本で働く(X)と、ほかのどの国で働くより長い時間働くことになる(Y)」に書き直せる |
| T2 | Y が観測できる形になっているか | 合格。 Y は2つの形で公的統計に数値で残っている。①就業者1人あたりの年間労働時間の国際比較(OECD が各国の統計から集計・1970年から) ②週50時間以上/60時間以上働く人の割合の国際比較(OECD・2000年前後から)。国内の推移は厚生労働省「毎月勤労統計調査」と総務省「労働力調査」に残っている |
| T3 | 一次データ源が存在しそうか(あたり2本以上) | 合格。 着手前に ①OECD Data Explorer(SDMX REST API・CSV で機械取得できる) ②厚生労働省「過労死等防止対策白書」と「毎月勤労統計調査」 ③総務省「労働力調査」の3系統を立てた。いずれも L1(公的機関が自ら測って公開した統計) で、機械取得できる形(CSV・xlsx・PDF)で配布されている |
| T4 | どちらに転んでも番組になるか(自己申告を先に書く) | 「支持なら、日本の労働時間は本当に世界の最上位で、統計もそれを示している、という回になる。不支持なら、平均で見た日本はもう上位ではなく、では『働きすぎ』の実感はどこから来るのかを数え直す回になる。保留なら、国ごとに測り方が違って順位を付けられない、という『比べ方』の回になる。どれでも番組は成立する。」(本文はこの後に続く) |
| T5 | YMYL 該当か(健康・医療・金銭・法律) | 非該当(本話の扱う範囲では)。 労働時間の長さそのものは健康・医療・金銭・法律のいずれにも当たらない。ただし「働きすぎ」は過労死(健康)に接続する語であるため、§8 の規律(個別の助言をしない・効能効果を断定しない・決着が付かないものを無理に決着させない)は自主的に全項目適用し、健康影響の因果には踏み込まない |
証拠台帳
```
検証回ID: M10-20260921-13
命題: 「日本は世界でいちばん労働時間が長い国で、日本で働く人は、ほかのどの国の人より長く働いている」
命題の出所: ナゾロジー記事(2026-09-11 取得)、リコー「働き方改革ラボ」記事(同)、The Lancet Regional Health – Western Pacific 論説(2021年)
判定: 不支持
判定日: 2026-09-11
```
| # | 階層 | 種別 | 出典名 | URL | 実測日時(JST) | HTTP | 取得方法 | 再利用条件 | 採否 | 採否の理由 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | L1 | 国際機関の統計集計 | OECD「Average annual hours actually worked per worker」全国・2019年以降(CSV・616行) | https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_AVG_ANN_HRS_WKD,1.0/all?startPeriod=2019&format=csvfilewithlabels | 2026-09-11 11:45 | 200 | curl → Python csv | OECD Terms and Conditions(商用利用可・出典表記義務) | 採用 | 判定の主柱1。2024年の43の国・地域の順位 |
| 2 | L1 | 同(日本・ドイツ・米国・韓国・OECD平均の全期間) | OECD 同データフロー・5系列の1950〜2025年 | https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_AVG_ANN_HRS_WKD,1.0/JPN+DEU+USA+KOR+OECD.HW.H_Y_PS._Z._Z.EMP.A.ACTUAL._T._Z.MEAN._Z._T?format=csvfilewithlabels | 2026-09-11 11:45 | 200 | curl → Python csv | 同上 | 採用 | 日本の1970年からの推移(作成者が「時系列の比較のため」と明記している用途) |
| 3 | L1 | 統計の定義・注意書き | OECD 同データフローのメタデータ(SDMX dataflow・detail=full) | https://sdmx.oecd.org/public/rest/dataflow/OECD.ELS.SAE/DSD_HW@DF_AVG_ANN_HRS_WKD/1.0?references=all&detail=full | 2026-09-11 11:45 | 200 | curl → XML | 同上 | 採用(R4・R6 の根拠として) | 「水準の国際比較には向かない」という作成者自身の注意書きの転記元 |
| 4 | L1 | 国際機関の統計集計 | OECD「Incidence of employment by long usual weekly hours worked」全国・2022年以降(CSV・23.4MB) | https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_EMP_LNG_USL_WK_HRS,1.0/all?startPeriod=2022&format=csvfilewithlabels | 2026-09-11 11:53 | 200 | curl → Python csv | 同上 | 採用 | 判定の主柱2。週50時間以上・60時間以上の割合の順位 |
| 5 | L1 | 同(日本・韓国・ドイツ・OECD平均の全期間) | OECD 同データフロー・4地域×2区分 | https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.ELS.SAE,DSD_HW@DF_EMP_LNG_USL_WK_HRS,1.0/JPN+KOR+DEU+OECD.SH_EMP_H.PT_WR_SEX_AGE_EMP_ST._T.Y15T64.EMP.W.USUAL._T._Z.OBS.H_GE50+H_GE60.MAIN?format=csvfilewithlabels | 2026-09-11 11:59 | 200 | curl → Python csv | 同上 | 採用 | 長時間労働者の割合の推移(2002年から) |
| 6 | L1 | 統計の定義・注意書き | OECD 同データフローのメタデータ | https://sdmx.oecd.org/public/rest/dataflow/OECD.ELS.SAE/DSD_HW@DF_EMP_LNG_USL_WK_HRS/1.0?detail=full | 2026-09-11 11:59 | 200 | curl → XML | 同上 | 採用(R6 の根拠として) | 「日本と韓国だけ実際の時間、他国は普段の時間」の転記元 |
| 7 | L1 | 統計の出典注記 | OECD「LFS_NOTES_SOURCES」(労働力調査の各国定義集・PDF・608KB) | https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/data/datasets/employability-data/LFSNOTES_SOURCES.pdf | 2026-09-11 11:57 | 200 | WebFetch 経由でファイル取得 → pdftotext(curl は oecd.org で 403) | 同上 | 採用(R6 の補助) | 日本の週労働時間の出所が労働力調査の「実際の時間」であることの確認 |
| 8 | L2 | 査読誌の論説 | The Lancet Regional Health – Western Pacific「Long working hours and health」2021;11:100199(PMC8315652・PMID 34327371・DOI 10.1016/j.lanwpc.2021.100199) | https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC8315652/fullTextXML | 2026-09-11 11:55 | 200 | Europe PMC REST API → 全文XML | CC BY 4.0(全文XMLの license 要素に明記) | 採用(命題の出所③として) | 海外の医学誌が日本を「働きすぎの国」と名指ししている文言。根拠ではなく出所 |
| 9 | L2 | 系統的推計 | Pega F ほか「Global, regional, and national burdens of ischemic heart disease and stroke attributable to exposure to long working hours for 194 countries, 2000–2016: A systematic analysis from the WHO/ILO Joint Estimates」Environment International 2021;154:106595(PMC8204267・PMID 34011457・DOI 10.1016/j.envint.2021.106595) | https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC8204267/fullTextXML | 2026-09-11 11:57 | 200 | Europe PMC REST API → 全文XML | CC BY 3.0(全文XMLの license 要素に明記) | 採用(背景として) | 世界の長時間労働の広がりの数値。日本の国別値は本文に無く未取得 |
| 10 | L1 | 公的機関の白書 | 厚生労働省「令和6年度 過労死等防止対策白書」第1章(PDF・39.5MB) | https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/r7karoushi-1.pdf | 2026-09-11 11:53 | 200 | curl → pdftotext -layout | PDL1.0 | 採用 | 判定の主柱3。国内の年間総実労働時間・就業形態別・週60時間以上の割合の転記元 |
| 11 | L1 | 公的機関の白書(概要版) | 同白書 概要版(PDF・2.0MB) | https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/r7karoushi-summary.pdf | 2026-09-11 11:51 | 200 | curl → pdftotext -layout | PDL1.0 | 採用(#10 の照合用) | 週60時間以上 8.0%(40時間以上比)の数値が本編と一致することの確認 |
| 12 | L1 | 公的統計 | 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年分結果確報」第2表(xlsx) | https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/25cr/xls/25cc02r.xlsx | 2026-09-11 11:50 | 200 | curl → zipfile + ElementTree | PDL1.0 | 採用(R2 として) | 2025年の月間実労働時間(就業形態別)。白書より1年新しい |
| 13 | L1 | 公的統計 | 総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年平均結果の概要」(PDF) | https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/gaiyou.pdf | 2026-09-11 11:52 | 200 | curl → pdftotext -layout | PDL1.0 | 採用(R2 として) | 2025年の週間就業時間別割合(表Ⅰ-9)。白書より1年新しい |
| 14 | L3 | 再利用条件 | 厚生労働省「著作権・リンク・免責事項」 | https://www.mhlw.go.jp/chosakuken/index.html | 2026-09-11 11:58 | 200 | curl | (規約そのもの) | 採用(条件確認) | PDL1.0 の適用と出典記載様式の確認 |
| 15 | L3 | 再利用条件 | 総務省統計局「利用規約」 | https://www.stat.go.jp/info/riyou.html | 2026-09-11 11:58 | 200 | curl | (規約そのもの) | 採用(条件確認) | PDL1.0・CC BY 互換・商用利用可の確認 |
| 16 | L3 | 再利用条件 | OECD「Terms & Conditions」(2024年7月1日改定) | https://www.oecd.org/en/about/terms-conditions.html | 2026-09-11 11:46 | 200(ブラウザ)/403(curl・WebFetch) | アプリ内ブラウザで開き、折りたたみ節を展開して本文を転記 | (規約そのもの) | 採用(条件確認) | 「Permitted Use」の転記元 |
| 17 | L5 | 一般向け記事 | ナゾロジー「日本人は本当に『働きすぎ』なのか?」 | https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/198986 | 2026-09-11 11:56 | 200 | curl | 各社の利用規約 | 採用(命題の出所①として) | 根拠には使わない |
| 18 | L4 | 企業の運営する媒体 | リコー「働き方改革ラボ」の記事 | https://www.ricoh.co.jp/magazines/workstyle/column/workingtime/ | 2026-09-11 11:56 | 200 | curl | 各社の利用規約 | 採用(命題の出所②として) | 根拠には使わない |
| 19 | L1 | 国際機関の統計集計 | ILO「ILOSTAT」平均週実労働時間(DF_HOW_TEMP_SEX_NB) | https://sdmx.ilo.org/rest/data/ILO,DF_HOW_TEMP_SEX_NB/.A..SEX_T?startPeriod=2023&format=csvfilewithlabels | 2026-09-11 11:48 | 200 | curl → Python csv | ILO の利用条件(未確認) | 不採用 | 180の国・地域の2024年値が取れたが日本の値が収録されていない(日本の系列は「普段の」時間で2015年が最終)。日本を含む比較に使えない |
| 20 | L2 | 査読付き文献データベース | Europe PMC 検索(日本・長時間労働・過労死) | https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/search | 2026-09-11 11:55 | 200 | curl → REST API | 各論文のライセンスによる | 不採用 | 検索式 (Japan AND "long working hours" AND karoshi) AND OPEN_ACCESS:Y で90件。上位25件は健康影響の研究で、労働時間の国際順位そのものを検証した研究は無かった。詳細は R1 |
反証チェック(R1〜R7)
| R# | 探した対象 | 探した範囲(検索式・DB名・年範囲) | 結果 |
|---|---|---|---|
| R1 | 反対の結論の一次データ(=日本が上位であることを示すもの) | ①OECD の主柱2(週50時間以上・60時間以上の割合)で日本の順位を確認 ②白書の一般労働者の年間総実労働時間 ③Europe PMC REST API・検索式 (Japan AND "long working hours" AND karoshi) AND OPEN_ACCESS:Y・90件中上位25件を目視 | 該当あり(→台帳#4・#10)。 週50時間以上働く就業者の割合は日本 15.574%(2024年)で45の国・地域中 7位、OECD平均 12.31% を上回る。週60時間以上も 5.273% で44中7位。一般労働者(フルタイム)だけの年間総実労働時間は 1,946 時間で、就業形態計の 1,643 時間より約300時間長い(白書・毎月勤労統計調査)。「長く働く人が多い国」であることは L1 が示している。 ただしどの指標でも1位はメキシコで、日本は最上位ではない。Europe PMC 側は健康影響の研究ばかりで、順位そのものを検証した研究は上位25件に無かった |
| R2 | より新しい/より大きいデータ | ①OECD 主柱1・主柱2 の 2025年 値を取得(台帳#1・#4 に含まれる) ②毎月勤労統計調査 令和7年分(2025年)結果確報(台帳#12) ③労働力調査 2025年平均(台帳#13) | 該当あり。結論は変わらない。 2025年の年間実労働時間は日本 1,597.507 時間で41中27位(1位メキシコ 2,205.4)。週50時間以上の割合は 14.7% で44中6位(1位トルコ 26.287)。国内では2025年の月間総実労働時間が一般労働者 160.5 時間・パート 79.1 時間、週60時間以上の雇用者の割合は 60〜69時間 2.8%・70〜79時間 0.9%・80時間以上 0.6%(労働力調査)。白書(2024年)より1年新しい値でも順位・傾向は同じ |
| R3 | 撤回・取消・訂正 | ①白書の各図の注記を全文検索(「推計値」「除く」「訂正」) ②OECD メタデータの注記 | 該当あり(統計そのものの訂正歴)。 白書は「平成 16 年から平成 23 年の数値は『時系列比較のための推計値』を用いている」と注記している。これは毎月勤労統計調査の2004〜2011年分に調査方法の不備があり、厚生労働省が後から推計し直した値であることを指す。本話が使う2024年・2025年の値はその期間の外にあるが、推移の図(1994年〜)には推計値の期間が含まれる。労働力調査は「平成 23 年は岩手県、宮城県及び福島県を除く」。本話の判定に使った2024年・2025年の値に訂正はかかっていない(白書の正誤情報は本日時点で見当たらなかった) |
| R4 | 測っていた指標のすり替え | 命題の Y(「長く働いている」)と、主柱1・主柱2 が測っている Y を並べて確認 | 該当あり。これが本話の中心である。 ①主柱1は就業者全員の平均で、パートタイムを含む。パートタイム労働者の比率が 32.2% まで上がった日本では、平均が下がる要因にフルタイムの短縮以外の要素が入る(白書自身がそう書いている)。②主柱2は長時間働く人の割合で、平均とは別のものを測っている。③そして OECD は主柱1について「水準の国際比較には向かない」と明記している。命題の「世界でいちばん」は水準の国際比較そのものであり、作成者が向かないと言っている使い方を、本話は順位を出すために使っている。 判定ではこの制約を前提に、順位の1つ2つの違いではなく「上位か下半分か」の粗い位置だけを読む |
| R5 | 資金源 | 3つの主柱と補助2本の作成者を確認 | 利害関係者ではない。 OECD(加盟国の拠出で運営される国際機関)、厚生労働省、総務省統計局。労働時間を長く見せたい/短く見せたい側の資金で作られた統計ではない。ただし厚生労働省は過労死等防止対策大綱の目標(週60時間以上 5%以下)の達成度を測る側でもあることは記録しておく。命題の出所③(Lancet 論説)は著者の資金源の記載が無い論説であり、根拠には使っていない |
| R6 | 母集団のズれ | 対象者の国・年齢・就業形態・測り方を視聴者と突き合わせ | ズれは2つある。 ①主柱2は OECD 自身が「日本と韓国だけ『実際の』週労働時間で、他国は『普段の』週労働時間」と注記している。休暇や病欠の週を含む「実際の」時間は「普段の」時間より短く出やすく、日本の長時間労働者の割合は他国より低めに出ている可能性がある(向きは日本に不利ではなく有利)。②主柱1と主柱3は「事業所を対象に調査した統計」(毎月勤労統計調査)を含み、主柱2と第1-1-1-4図は「世帯を対象に調査した統計」(労働力調査)である。白書自身がこの違いを注記している。視聴者と同じ国・同じ時代の統計である点は有利だが、国際比較の部分は測り方が国ごとに違う |
| R7 | 生存者バイアス/出版バイアス | 記録されない時間・記録されない人がいないかを確認 | 該当あり。 ①事業所調査(毎月勤労統計調査)は事業所規模5人以上が対象で、4人以下の事業所は入っていない。②賃金の支払われない残業は事業所の記録に残らない。日本の年間労働時間の国際比較にどちらの統計が使われているかは未確認(§「未確認」)。③労働力調査は月末1週間の自己申告で、「年により月末1週間の祝日数及び曜日が変動するため、時系列比較には注意を要する」と注記されている。④ILOSTAT には日本の「実際の」週労働時間が収録されておらず(台帳#19)、国際機関の統計に日本が載っていない指標があること自体が、比較の穴である |
判定理由
判定: 不支持(画面表示は「反証」)
理由を3つに分けて書く。
1. 平均で見た日本の労働時間は、最上位ではなく下半分にある。 OECD の就業者1人あたり年間実労働時間(2024年)で、日本は 1,617.381 時間。43の国・地域のうち 28位で、OECD平均 1,741.13 時間を下回る。1位のペルー 2,263 時間、3位のメキシコ 2,214.9 時間とは600時間以上の開きがある。2025年の値(1,597.507 時間・41中27位)でも同じ位置にある。命題の「世界でいちばん」は、平均で測るかぎり記録と合わない。
2. 長時間働く人の割合で見ると日本は上位だが、それでも最上位ではない。 週50時間以上働く就業者の割合(2024年)は日本 15.574% で45の国・地域中 7位。OECD平均 12.31% より高く、イギリス 10.661%、フランス 9.607%、ドイツ 4.978% を大きく上回る。「平均は短くなったが、長く働く人は残っている」という反対向きの証拠は、同じ L1 の中にある。 しかしこの指標でも1位はメキシコ 26.414%、2位トルコ 25.701% で、6位の韓国 15.756% にもわずかに届かない。命題が「上位のほう」なら支持できたが、「どの国よりも」は支持できない。
3. 日本の中でも、長時間労働は20年で半分以下になっている。 週60時間以上働く雇用者の割合は、2000年の 12.0% から 2024年の 4.6% へ。人数では 631万人 から 269万人 へ。週50時間以上の割合(OECD)も 2002年の 29.64% から 2024年の 15.574% へ下がった。1990年には日本の年間労働時間(2,031 時間)は OECD平均(1,871.605 時間)もアメリカ(1,878.419 時間)も上回っていたので、命題は過去には記録と合っていた。合わなくなったのは、この30年で日本の側が変わったからである。
したがって、命題は不支持。 「日本で働く人は長く働く人の割合が高い」という弱い形なら L1 が支持するが、命題が言う「世界でいちばん」「どの国よりも」は、平均でも、長時間労働者の割合でも、記録と合わない。
支持側に倒さなかった理由: R1 のとおり、週50時間以上・60時間以上の割合では日本は上位2割に入り、一般労働者だけを見れば年間 1,946 時間で、就業形態計の 1,643 時間より約300時間長い。これらは命題を支持する向きの L1 である。しかし支持しているのは「上位」であって「1位」ではなく、命題の中心の主張には届かない。
保留に倒さなかった理由: OECD 自身が主柱1の水準比較に注意を促している(R4)ため、順位の細かい違いは読まない。それでも「1位か、下半分か」という粗い問いには答えられる大きさの差(600時間以上)があり、主柱2は労働力調査どうしの比較で主柱1より比較可能性が高く、こちらでも1位ではない。両側とも L1 で、母集団のズれは向きが分かっており(日本に有利な向き)、データ源はすべて A 判定(機械取得できた)である。プロトコル §4-3 が保留の条件に挙げる3つ(両側とも L3 以下/母集団がズれている/データ源が D)のどれにも当たらない。
この回で言えないこと: 長時間労働が健康にどう影響するかは、本話の統計では分からない(扱っていない)。賃金の支払われない残業がどれだけあるかも、この統計では分からない。なぜ日本のパートタイム労働者の比率が上がったのかも、この統計からは分からない。
